顧客満足向上(CS向上)は、多くの企業で取り組まれていますが、苦戦していることも多いようです。しかし一方で、顧客満足向上で大きな成果に繋げている企業では、顧客満足やサービスの本質を理解して、組織的なレベルアップに取り組んでいます。そこで今回は、サービスサイエンスの観点で成果を出すための顧客満足の取り組み方を明らかにしてみたいと思います。
前回は、顧客満足向上の前に、そもそも顧客満足の定義すら組織で共有されていないことに着目し、その定義を明らかにしました。この定義は、言われてみれば当たり前のようですが、実はそのポイントを理解すると、我々のこれまでの活動の進め方が少し筋違いだったかもしれないことに気づきます。
そこで今回は、顧客満足のポイントからご紹介していこうと思います。
■今までの顧客満足向上の取り組みは筋違いだったかもしれない?!
『顧客満足は、お客様がサービスを受ける前に持っている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる。』というのが、顧客満足の定義です。そのポイントは、「顧客満足は絶対値ではない」ということです。つまり、事前期待と実績評価の「相対値」で顧客満足は決まります。
この点を踏まえて、我々が今まで顧客満足向上のために取り組んできたことを思い返してみましょう。例えば、「いかにお客様に喜んで頂くか」というテーマでの議論を思い浮かべると、議論の内容のほとんどが、「お客様からの実績評価をいかに大きくするか」にしかフォーカスできていないことに気付きます。先ほどの顧客満足の定義によれば、「顧客満足は事前期待と実績評価の相対値」なので、「実績評価」の方だけに着目して顧客満足向上に取り組むのは筋違いだと言えます。
つまり顧客満足を向上しようと思ったら、お客様の「事前期待」を掴まなければ意味がないのです。この考え方を、取り組みを始める際にしっかりと組織で共有できているかどうかが、顧客満足向上を成果に繋げる上で、とても大切なポイントになります。
「事前期待」とは何で、具体的にどんな構成要素から成り立っているのかについて、以前の記事でご紹介しました。事前期待とひとことで言っても、案外複雑な構造をしています。しかも、我々が普段議論が慣れている「サービスの内容・品質・価格」といった「事前期待の対象」について、いくら努力しても感動サービスやホスピタリティサービスは実現できないことが分かりました。また、全てのお客様が共通的に持っている事前期待に応えても「当たり前」と言われてしまうことが多い。そんなことも分かりました。事前期待を掴んで応えるといっても、具体的にどんな事前期待に応えるかで、顧客満足の高さは大きく変わるのです。
そこで重要なのは、顧客満足向上の目標地として「満たすべき事前期待」を定めることです。例えば売上向上のための取り組みであれば、売上目標を決め、ターゲットを定めて組織一丸となって努力するので、どうにか目標を達成することができます。しかし顧客満足向上の取り組みでは、目標地を定めずに努力していることが実に多いのです。目標地が明確でない中でいくら努力しても、組織全体でベクトルを揃えて前進することはできません。
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service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新