「顧客志向」を建前論に感じてしまうかもしれません。しかし最近、本気になって顧客志向を実現することで、サービスやCSで競争優位を築こうという企業が増えています。しかし一体何をしたら良いのか分からない。そこでサービスの本質を理解して、ロジカルかつ組織的に取り組むための方法として、サービスサイエンスが注目されています
前回に引き続き、「顧客志向」を建前論ではなく、本気になって実現することで、お客様から選ばれ続ける。そのための具体的な方法を、サービスサイエンスの理論を交えて紹介します。サービスはお客様と一緒に作るもの。だからこそ、お客様の事前期待を掴まなければ、サービスを提供することすらできません。この「事前期待」を掴んでそれに応えるための方法として、顧客の定義の仕方を変えることに着目してきました。今回はその具体的な内容に詳しく触れてみたいと思います。
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事前期待の違いによってサービスは別物になる
これまでに、保険の加入相談サービスにおける3つの事前期待の違いに着目してきました。保険の内容、予算感、相談の進め方のそれぞれに対する事前期待には、お客様ごとに違いがありそうです。
(1)保険内容:「できるだけ安心な保険に入りたい」、それとも「そこそこ安心な保険でよい」。
(2)予算感:「納得できれば高くてもよい」のか、「できるだけ安い保険に入りたい」のか。
(3)相談の進め方:「保険は複雑で考えるのが面倒なので、スタッフからお勧めしてほしい」、または「保険は複雑なので、だまされたくないので自分で理解して決めたい」。
この中で、「できるだけ安心な保険」に入りたくて、「納得できれば高くてもよい」という事前期待を持つタイプのお客様がいます。このタイプのお客様は、納得していただければ高い保険に入ってくれるので、保険会社としては是非気の利いた対応をしたいものです。ではどうしたら良いでしょうか?前回挙げた事前期待を思い出してみると、相談の進め方についても事前期待に違いがありそうです。
「保険は複雑なので、自分で理解して決めたい」というお客様には、できるだけ丁寧な説明と小まめなQ&Aを繰り返すことで、とことん納得していただかなくてはなりません。
一方で、「保険は複雑で考えるのが面倒なので、スタッフにお勧めしてほしい」というお客様に対して、同じく丁寧な説明と小まめなQ&Aを始めると、「やっぱり保険って面倒くさい」と思われて、加入していただけない恐れがあります。そこでこの「お勧めしてほしい」という事前期待のお客様には、スタッフがお客様のご要望を的確に把握したうえで、ドンピシャな提案をしなければならないのです。
このように、保険の内容や予算感に対する事前期待が同じお客様であっても、相談の進め方に対する事前期待の違いによって、相談サービスの現場で取るべきアクションを180度変えなければならないことがすぐに分かります。「事前期待」でお客様を定義すると、具体的な努力のポイントが、誰でもピンとくるのです。
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新