「顧客志向」を建前論に感じてしまうかもしれません。しかし最近、本気になって顧客志向を実現することで、サービスやCSで競争優位を築こうという企業が増えています。しかし一体何をしたら良いのか分からない。そこでサービスの本質を理解して、ロジカルかつ組織的に取り組むための方法として、サービスサイエンスが注目されています
これまで見てきたように、サービス向上や顧客満足向上に苦戦している企業は、いろいろなお客様がいるにもかかわらず、それをすべて十把一絡げにして「お客様」の一言で済ませてしまっていることが多いようです。サービスはお客様と一緒に作るものです。お客様の定義が曖昧では、取り組みがうまくいかないのは当然と言えます。
とはいえ、様々なお客様を具体的にどう定義したらよういのでしょうか。本連載では前回までに、「重要な事前期待の違いに着目して、お客様のタイプを定義する」方法についてサービスサイエンスの理論を交えて説明しました。
その効果は極めて大きいのですが、特に法人向けサービスに関わる方の中には、自社ではどう活用したらよいのだろうかと悩んでしまう方がいるかもしれません。お客様が法人なので、具体的に誰を対象にしたら良いのか悩んでしまうのです。こんな時には「ステークホルダー」を整理することが効果的です。
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「お客様」のステークホルダーを整理する
法人向けサービスの場合、目の前のお客様が満足してくれたのに契約やリピートに至らなくて悔しい思いをした、という経験をしたことのある方は多いのではないでしょうか。こんなときサービスサイエンスでは、事前期待でお客様を定義する前に、ステークホルダーを整理します。そして、どのステークホルダーへの対応を磨き上げることに価値があるのかを明確にします。
顧客企業の中でも色んな人が関わってくるので、「お客様を定義しましょう」と言われても、単純にはできません。
法人営業の場合、ステークホルダーは、例えば次のように整理できそうです。
・打ち合わせでお会いする対応担当者
・対応担当者の上司であり、発注やリピートオーダーの可否を決める意思決定者
・実際に提供したサービスを企業内で利用することになるサービス利用者
さらには、顧客企業のお客様も大切なステークホルダーかもしれません。
このように、顧客企業の中には様々なステークホルダーが存在します。これらを「お客様」の一言でまとめてしまっては、効果的な議論や取り組みはできません。だからこそ法人営業においてはステークホルダーを整理して、重要なステークホルダーをはっきりさせる必要があるのです。
今まで気づいていなかった事前期待が見つかる
重要なステークホルダーが明確になれば、「事前期待でお客様を定義する」ための議論を比較的容易に進めることができます。また、ステークホルダーを整理すると、目の前のお客様しか意識できていなかったときには分からなかったお客様の事前期待が見えてくることがあります。
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新