14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第5章|人生〉第5話
このように選択肢がもっとも限られるのは甲娘で、逆にもっとも豊富なのは丙娘です。では、なぜこのような差が生まれるのでしょう?―――それは、ただ目の前にある選択肢を選り好みしているだけなのか、あるいは、選択肢をあらたにつくりだそうとするのか、という心の姿勢の差にあります。
甲娘は、与えられた選択肢にいろいろと文句はつけるだけで、選択肢を増やそうという努力をしていません。「これもダメ」、「あれもバツ!」と言って、最後には「ああ、自分は恵まれていない」とぐちをこぼす姿勢です。これでは自分の選べるものがじり貧になってしまいます。
それに対し、乙娘は自分の力で選択肢を増やそうとしています。手持ちのものが自分の好みや都合に合わないのなら、合うように変えていく努力をしているのです。
丙娘は選択肢を増やすために、もっと積極的に取り組んでいます。自分の力だけでなく、他人の力も巻き込んでやろうという計画です。しかも協力してくれるみんながハッピーになれるような働きかけをしています。そうやって丙娘は、たくさんの、しかも新しいドレスのなかから選べる状況をつくりだしました。
わたしたちは小さいころからいろいろと選択肢を与えられます。「こっちの青と、あっちの赤とどっちがいい? 好きなほうの服を選びなさい」「晩ごはんはカレーにする? ハンバーグにする? 食べたいほうはどっち?」「この予算内で自分が買いたい自転車を決めなさい」「あなたの実力で合格できそうなのはA校かB校です。どちらの受験を決意しますか?」など。親や先生があらかじめ示してくれた選択肢を子どもは受け取り、そのなかから自分に合ったもの、自分がよいと思うものを選ぶ。そうした過程で、子どもはものを比較したり、判断したりする力をつけていきます。これは一つの大事な成長です。
けれど、その成長は一つの段階にすぎません。なぜなら、それは与えられたものから選んでいるだけだからです。次の成長段階は、選択肢をみずからつくりだすということにあります。
いま、あなたの目の前には「A・B・C」の3つの選択肢があるとしましょう。そして、その3つにどれも満足できないとします。さて、あなたはどうしますか?
文句を言って全部を拒否するか―――でも、そうやって投げやりになって、状況がよくなるためしはありません。
または、しょうがないなと言ってどれかを選んでがまんするか―――でも、妥協ばかりを積み上げてこしらえた人生はどこかさびしい。
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14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。