マクドナルドの「個人仕様の新型クーポン」に注目が集まっています。お客様ひとりひとりに合ったクーポンを提供することで売上を向上させる個人仕様クーポン。その成功のポイントは何なのでしょうか。
そのために有効なのが、「顧客カードや顧客データベースの活用」です。このお客様がどんなお客様なのかを、過去の利用履歴やプロフィールなどから把握することで、お客様一人ひとりに対して共感性の高いサービスを提供できるようになるのです。マクドナルドでは、こういった仕組を2004年から300億円かけて構築してきたことで、このような個人仕様のクーポンが提供できるようになったというわけです。
■クーポンを通して「サービスを共創する」
このクーポンは「クーポンを使えば使うほど、より自分に合ったクーポンが配信されてきて、さらにクーポンを使う気になる」というサイクルがうまく回っています。このような考え方を、サービスサイエンスでは「サービス共創モデル」と呼んでいます。この「サービス共創」を実現することが、個人仕様クーポンの成功を大きく左右するのだと思います。
では、サービス共創モデルとは何かを簡単にご説明いたします。
サービス共創モデルとは、サービス提供者とお客様が相互に刺激し合うことでサービスを高めていくというモデルです。具体的には、例えば次のような4つのステップでサイクルが回ることで、サービスがスパイラルアップしていきます。
①アクション:サービス提供者がサービスを提供する。
②評価:お客様がサービスを高く評価(大満足・感激)する。
③フィードバック:お客様からサービス提供者に高い評価を伝えて頂ける。(感謝の言葉・チップ・顧客紹介など)
④ブラッシュアップ:サービス提供者が意気に感じて、さらにサービスを磨き上げる。
→①に戻る
ここで重要なポイントとなるのが、お客様からフィードバックをタイミング良く頂けるサービス設計ができるかどうかです。(もちろん質の高いサービスを提供することは重要です。)例えばフィードバックのタイミングや頻度は、サービス提供完了後に1度だけなのか、サービス提供中に何度もフィードバックして頂きながらお客様とサービスを共創していくのかを考えて設計する必要があります。
*この辺りの詳細は別の機会にお話し致します。
ではマクドナルドの個人仕様のクーポンの仕組を「サービス共創モデル」に当てはめてみましょう。
①アクション:マクドナルドがお客様に合わせてクーポンを提供する。
②評価:お客様がクーポンを使う/使わない。(クーポンがお客様の期待に合っている/いない)
③フィードバック:会計の際にお客様がどのようにクーポンを使用したか/しなかったかの情報がマクドナルドに提供される。
④ブラッシュアップ:お客様の利用状況を元にさらにお客様に合ったクーポン提供を検討する。
→①に戻る
このサービス共創のサークルを回して、「クーポンを使えば使うほど、より自分に合ったクーポンが配信されてきて、さらにクーポンを使う気になる」というお客様をどれだけ増やせるかが、個人仕様のクーポン成功のカギだと思います。現在様々なタイプのクーポンが出てきていますが、サービス共創(お客様と一緒にサービスを作り上げる)という視点で考えてみると、まだまだ改善の余地があるのかもしれません。
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サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新