LCCへの注目度が高まる中、「このレベルのサービスまでしか提供できません」という内容のスカイマーク・サービスコンセプトが波紋を呼んでいます。スカイマーク・サービスコンセプトから垣間見える航空会社の苦悩から、サービスの視点で学ぶべきことは何なのでしょうか?
日本のLCC元年の今年、3月にPeach(ピーチ・アビエーション)が、7月・8月にはジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンが就航開始となり、LCCへの注目度は高まる一方です。そんな中、「このレベルのサービスまでしか提供できません」という内容のスカイマーク・サービスコンセプトが波紋を呼んでいます。そこで今回は、スカイマーク・サービスコンセプトから垣間見える航空サービスの苦悩から、「サービスの視点で学ぶべきことは何か」について考えてみたいと思います。
■サービスへの期待と実情とのギャップ
LCCでは料金を安価に抑えるために、様々なコスト削減の工夫がされています。例えば、サービスは絞り込んで単純化して、その他のサービスを無くしたり有料化しています。また、機内の座席数を多くするために座席が狭くなっているなど、ここで紹介しきれないほどたくさんあります。その工夫の積み重ねの結果、コストは一般的な航空サービスの半分程度に抑えられているようです。
すると当然ながら、一般的な航空サービスでは当たり前のサービスがLCCでは受けられないというギャップが生じます。具体的には、こんな状況が想定されます。お客様はLCCに対しても、一般的な航空サービスが提供する様なハイレベルなサービスを期待してしまっている。しかしLCCではコスト構造上、そこまでハイレベルなサービスは提供できない。その結果、利用頂いたお客様にガッカリされてしまったり、クレームを頂いてしまい、お客様を失ってしまう恐れがある。
この「サービスへのお客様の期待と実情とのギャップ」これをいかに埋めるかがLCCの大きな課題のひとつなのではないでしょうか。そこで一般的に行われるのが「サービスレベルを上げる」ということですが、LCCの場合はそこに時間やコストがあまりかけられない、というのが難点です。スカイマークはLCCではありませんが、スカイマーク・サービスコンセプトでは、事前にお客様に情報提供をすることでサービスレベルについて理解・納得頂くことを狙って搭載されたのではないかと思います。
ここから、サービスにおいて学ぶべき点は、お客様に満足して頂くために「事前期待をマネジメントする」ということです。それでは、なぜ「事前期待」に注目するのか?「事前期待のマネジメント」とは何なのか?サービスサイエンスの視点で順に見ていきたいと思います。
■お客様に満足頂くために注目すべきは「事前期待」
次のページ■膨らみ過ぎた事前期待をマネジメントする。
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新