日本の製造業において「サービス」の重要性が高まってきています。その一方で「製造業のサービス化」と言われても、それがどのように事業に貢献するのかピンとこないという方も多いようです。そこで、サービスがどのように製造業の事業に貢献できるのか、その可能性を4つの方向性を考えてみたいと思います。
前回の記事“産業のサービス化を支えるサービスサイエンス”で、全ての産業においてサービスは競争優位そのものになってきているというお話しをさせて頂きました。そこで今回は特に「製造業のサービス化」に注目して、サービスがどのように製造業の事業に貢献できるのか、その可能性を4つの方向性で考えてみたいと思います。
■製造業においてサービスの重要性が高まっています。
近年、製造業において注目されているキーワードを見てみると、製造業においてもサービスの重要性が高まっていることが分かります。「モノからコトへ」「モノ売りからソリューション売りへ」「製造業のサービス化」これらのキーワードには様々な解釈があると思いますが、ただ単にモノを作って販売するのではなく、お客様の期待に応える経験・解決策・サービスに仕立てて提供する必要があるということを指しているかと思います。製造業において「サービス」というキーワードは、もはや無視できない存在になってきているのではないでしょうか。
確かに、製造業において特に早くからサービスに注力している組織があります。それは、製品販売後のアフターサービス部門に当たる「保守サービス部門」や、製品販売前のビフォアサービスとも言える「営業部門」、更には定常的に発生するお客様からの問合せに対応する「コンタクトセンター部門」ではないでしょうか。こういった部門では、お客様に満足して頂き、受注やリピート購入をして頂くためのサービス設計に早くから取り組んできています。しかし会社全体やビジネスモデル全体から見てみると、まだまだ部分的な取り組みで、サービスが事業に大きく貢献するという視点での取り組みができている企業は少ないようです。
そこで「サービス」が製造業において、いかに事業に貢献できるのか、4つの方向性を見てみたいと思います。
■サービスが製造業に貢献する4つの方向性
1.サービスで事業を収益化する。
製造業においては、例えば保守・メンテナンスといったアフターサービスは、「無料」や「おまけ」「面倒な業務」としか捉えていない企業が多いようです。本当にそれで良いのでしょうか?少し考えてみてください。お客様は、製品を購入した後にはある程度の期間、製品を使い続けてくれます。このお客様に対しては、保守・メンテナンスサービスの提供機会は定期的かつ安定的にあると言えます。これは、変化の激しい経済環境下でいつも製品を新規のお客様に販売し続けることと比べれば、極めて安定したビジネスになります。更には、追加の営業もほとんどかけることなくアフターサービスを購入して頂けるため、利益率が製品販売に比べて高いという魅力もあります。
このように、製品販売以外のサービスを収益化することで、事業をストックビジネス化している企業が増えてきています。
次のページ2.サービスで製品を差別化する。
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サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新