金融機関の顧客満足度ランキングで大手銀行を押さえ、常に上位の評価を獲得しているのが岐阜県の地方銀行の大垣共立銀行です。なぜ大垣共立銀行がこれほど高いCSが得られるサービスを実現できたのか?実はそのカギは「サービスの定義」にありそうです。
これまでの記事では、高い顧客満足を得るためには、「事前期待」に着目することが極めて効果的であるということを中心にお話しさせて頂きました。そして前回はスターバックスのサービスを例に、「サービス品質」を高めるためにはどうすべきか?についてお話しさせて頂きました。
そこで今回は、これまで必ずしも評価が高くはなかった銀行のサービスを「素晴らしいサービス」に変革させた大垣共立銀行を事例として、自社のサービスを大きく変革させるうえで「サービスを定義する」ことがどんな意味を持つのかについて考えてみたいと思います。
■大垣共立銀行は「金融業ではなくサービス業」
今回取り上げる大垣共立銀行は、日本経済新聞 金融機関の顧客満足度ランキングで2011年は総合1位(ネット系銀行を除く)、2012年はTOP10入りし地銀では1位に輝いた岐阜県の地方銀行です。この大垣共立銀行は、岐阜県内シェア44%、大垣市シェア82%という地元密着型の銀行で、素晴らしいサービスで差別化をしていることでも有名です。それではまず、具体的にどんなサービスを行っているのか、その一例を挙げてみたいと思います。
・全国初のキャッシュコーナーの365日年中無休稼動。定休日を気にせず利用できる。
・移動ATM『ひだ1号』。銀行機能を載せたバスが過疎地域を巡回してくれる。
・ドライブスルーATM。わざわざ車を降りずにATMを利用できる。
・ATMに説明スタッフ配備。不慣れなご老人などに何度でも親切に対応してくれる。
・商談でリラックスできるように、高齢者には和風、奥様にはキッチン風の商談室が用意されている。
などなど
このように素晴らしいサービスを提供している大垣共立銀行ですが、銀行のサービスを変革するということがなぜできたのか。そのヒントは、頭取の土屋氏の掲げた「我々は金融業ではなくてサービス業だ」という言葉にあります。自らを「サービス業」と定義することは、スタッフ1人1人の意識を変え、組織一丸となってサービス変革を推進するためには、極めて効果的なのです。
サービスサイエンスでは全ての産業はサービス業であると捉えています。つまり、銀行以外にも製造業や農業、物流業、医療、学校など、全てはサービス業だという視点で捉え直すことができるのです。「我々はサービス業だ」と認識することで、CS向上やサービス改革のヒントが見つかる企業はまだまだあるのではないでしょうか?
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サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新