「コンシェルジュ」をコンセプトに掲げているサービスが増えています。コンシェルジュサービスでお客様に喜んで頂くために押さえるべきポイントとは何なのでしょう?帝国ホテルの一流サービスから、サービスサイエンスの視点で探ってみたいと思います。
最近よく耳にする「コンシェルジュ」という言葉。元々はホテルのお客様からの様々な要望に応えるスタッフの職務のことを指していましたが、最近ではそこから派生してあらゆるサービスにおいて「お客様のご要望に柔軟にお応えします」というサービスコンセプトの代名詞となっています。例えば、接客スタッフのサービスコンセプトとして掲げていたり、「〇〇コンシェルジュ」というサービスメニューが設けられていたり、総合案内所の別名として「コンシェルジュ」と表記されていたり。
しかしその一方で「コンシェルジュサービス」を提供するために、どんな努力をしたら良いのか?については直観や現場任せ・個人任せになってしまっている企業も多いようです。そこで今回は、コンシェルジュサービスを提供するために押さえるべきポイントとは何なのかを、帝国ホテルのサービスから探ってみたいと思います。
■帝国ホテルのサービス
帝国ホテルは明治23年(1890年)に開業した、日本を代表する高級ホテルのひとつであり、最高レベルのサービスを受けられることで知られています。また以前から新サービスを生み出していることでも有名です。例えば、1910年に始めた日本初のホテル館内でのクリーニングサービスは、ボタンを外してからクリーニングをするなど、質の高い伝統サービスとして知られています。また、意外と知られていないのですが、食べ放題の代名詞でもある「バイキング」を生み出したのも帝国ホテルなんです。
このように新たなサービスを生み出してきた帝国ホテルで近年新たに発足したのが、コンシェルジュサービスのレベルをさらに高めるための「ロビーマネジャー」という職務です。その主な役割としては、「ドアマンがお客様をお迎えし、フロントでチェックイン頂き、ベルマンが荷物をお持ちしながらお部屋に案内する」といったロビーでのサービスプロセスの中で、お客様に不快な思いをさせぬよう、更には大満足頂けるよう、お客様に寄り添うことが求められています。
具体的には、
・お客様の名前を呼んでお出迎えする。
・何か困りの様子のお客様に、こちらからお声掛けし、ご要望にお応えする。
・順番待ちのお客様が不快な思いをしないよう、話しかけて楽しい時間を過ごして頂く。
・必要以上にお声掛けしない。(そっと見守る。)
といった具合に、お客様の状況に共感して柔軟に対応することが求められるのがロビーマネジャーの仕事です。この職務には各サービス部門の精鋭が集められ、ほとんどマニュアルが無い中で、これまでの経験を基に質の高いコンシェルジュサービスを提供しており、これが帝国ホテルの顧客満足向上やリピーター獲得に繋がっているのです。
次のページ■コンシェルジュサービスの3つのポイント
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
2013.01.28
2012.11.13
2012.10.30
2012.06.21
2012.06.12
2012.06.05
2012.05.29
2012.04.03
2012.03.13
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新