ミーティングのその場もしくは直前に資料を配って説明から始める「開けてびっくり玉手箱」方式では、いつまで経っても生産性は上がらない。責任者はそう認識する必要がある。
素人ばかりではない。少し前には、一緒のプロジェクトに参加していた経営コンサルティング会社の数人のコンサルタントが平気でこうしたやり方で発表しようとしていた。その会社では基本を教えていなかったのか、新たに参加するコンサルタントが次々と同じようなことをするので、その度に苦言を呈する羽目になってしまった。いい加減あきれた小生はプロジェクト・ルールとして新たに周知したものだ。
ではなぜ「開けてびっくり玉手箱」方式が漫然と繰り返されることがこれほど多いのだろう。一つには企業文化や慣習的なものだろう。小生が以前所属した組織では上から下までこうしたやり方だった。小生は自分の関与する範囲だけでも直すように努めていたが、他部署では疑問を持つことすらなかったかも知れない。
二つめには、日本の企業では能率を上げる意識や時間コストの感覚が以前は厳しく教育されていなかったという実情があろう。最近は随分とましになったようだが、平成の初め頃まではだらだらと長時間勤務することがあまり疑問視されておらず、会議の非効率さを正す動きも一部に限られていた。
そうした時期にビジネスの基本に関する教育を受けた人たちの多くは、根本の部分で時間コスト感覚が緩いように思われる(念のために申し上げておくと、小生自身は完全に昭和世代だが少々変わり者扱いされていた)。
三つめは、本人の「逃げ・言い訳」心理だ。あまりに事前に資料をアップ&共有しておくと、じっくり読んだ人から鋭い突っ込みを受けるかも知れない。それに耐えられるほど資料の完成度に自信がない。だから直前ぎりぎりまで可能な限り手直しし、完成度を上げておきたい。少なくともそうした姿勢を示したい。実に肝が細くて料簡が狭い。全体のことを考えていない。
とはいえ、この「完成度が低いままでは共有できない」という心理も分からなくはないので、小生はこう伝えるようにしている。すなわち「いったん出来上がった段階でなるべく早くアップ&共有通知してください。そして手持ちのほうのファイルを継続的に修正して、何度もアップし直してファイルを更新してもらって構いません」と。
こうすれば他の会議参加者は未完成かも知れないけどファイルを事前に閲覧もしくはダウンロードでき、大筋は把握できる。何の話か理解した状態で、または質問したい事項を頭に描いた状態で、会議に臨むことができる。完成資料の場合とそれほど大差ない状態にできるのだ。会議時の資料に、事前の資料に比べ一部追加修正が入っていても、誰も文句を言うはずはない。
「開けてびっくり玉手箱」方式が会議の生産性を下げる原因の全てではない。しかしこれを止めさせるか否かで大きな違いがあることは実感できる。少なくとも「開けてびっくり玉手箱」方式を続けるような会社やプロジェクトでは、いつまで経っても生産性は上がらない。業務改革
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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