サービスモデルが優れている他社の事例を分析して学びやヒントを得る「サービスモデルマーケティング」という新しいアプローチで、事業成長の加速を目指す企業が増えています。
ビジネスモデルや事業戦略で世間から注目される企業も、継続的な事業成長のためには「サービスモデル」の構築と変革に行き着いています。ビジネスモデルはマネされやすいと苦悩している企業が少なくありません。同じようにサービスのメニューや機能も、開発した先からマネされてしまいます。同業他社をベンチマークして差を埋めていく取り組みが進めば進むほどに、サービスは同質化していきます。待っているのはじり貧の価格競争です。
一方で、いま元気の良い企業やイノベーションを実現している企業は、顧客との価値共創のしくみ、つまり「サービスモデル」が優れているという見方が注目されています。サービスモデルの組み立ての上手さで、顧客から圧倒的に選ばれて事業を成長させていこうと、改革に乗り出す企業が増えているのです。
ただし、いきなり自社の中からサービスモデルのアイデアや進化の糸口を生み出そうと思っても、どこから手を付けたら良いか分からず困ってしまいます。そこで、サービスモデルが優れている他社の事例を分析して学びやヒントを得る活動に乗り出す企業が増えてきました。これを「サービスモデルマーケティング」と名付けています。
事例をサービスモデルでひも解くサービスモデルマーケティング
サービスモデルとは何かについては、大まかに次のような構成要素があります。①共創する価値とは何か?②どのように価値を共創しているのか?③どうやってサービスを進化させているのか?④どのように経営が関わることで価値共創を持続可能にしているのか?この中で③と④は、分析対象のサービス事業者に訪問してヒアリングしないと分からないことが多い。そこでサービスモデルマーケティングの手始めは、サービスの価値を決定付ける①と②の部分にフォーカスすると良いでしょう。それはつまり、①共創する価値、つまり「事前期待の的」の設計と、②価値共創のしくみ、つまり「共創型サービスプロセス」の設計の2点をひも解くことです。
たとえば①で、そのサービスが応えようとしている「事前期待の的」を見出すことで、そのサービスにはどのような価値があり、なぜそのサービスが顧客や市場から圧倒的に選ばれているのかを明らかにすることができます。事前期待と一言で言っても様々です。すべての顧客に共通する事前期待もあれば、顧客ごとにことなる個別的な事前期待もあります。また、同じ顧客であっても状況で変化する事前期待もありますし、思ってもみないサービスを受けて感激したという経験の基になるような潜在的な事前期待もあります。どのような事前期待を的に定めるかによって、サービスの価値はガラリと変わります。分析対象のサービスが、顧客や市場から選ばれている理由は、どのような事前期待に応えているからなのでしょうか。他社では応えられない事前期待に応えているのかもしれません。顧客が諦めている事前期待に応えるような新たなサービスを生み出しているのかもしれません。優れたサービスの事例の価値を象徴する事前期待の的をひも解くことで、自社のサービスモデルの価値を高めたり、革新するためのヒントが得られるはずです。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2023.03.07
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新