サービスの「バラツキ」をなくそうと努力している企業は多いと思います。サービスのバラツキは、本当に「悪」なのでしょうか。「バラツキは悪」という考え方が、サービスの価値向上を阻害しているかもしれません。
サービスの何がバラついているのか
「サービスのバラツキ」とは、いったい何を指しているのでしょうか。多くの場合、次の2つに分けることができます。
1つは、サービス提供者のアクションのバラツキです。顧客への対応の仕方や姿勢、言葉遣いや対応スピードなどがその例です。決められた通りの顧客対応がきちんとできなかったり、顧客対応時間など社内で重視している行動指標の結果がバラついたりと、サービス提供者のアクションがバラついていることを問題視しています。
もう1つは、顧客からの評価のバラツキです。一部の顧客からクレームや苦情を頂いてしまったり、同じ対応をしても顧客によって評価の良し悪しの差が生まれてしまったりと、多くのお客様から一様に高い評価を頂くことができていないことを問題意識の中心に据えています。
サービスのバラツキをなくす本来の目的は、2つ目の「顧客からの評価のバラツキ」です。それを実現するための手段として、1つ目の「サービス提供者のアクションのバラツキ」をなくそうというわけです。
顧客からの評価を高めるために
目的である顧客からの評価を高める方向性は2つあります。失点をなくすことと、得点を増やすことです。この2つの方向性によって、「サービスのバラツキ」の捉え方を大きく変えなければなりません。
失点をなくすための取り組みでは、いかにクレームや苦情、不満足評価をなくせるかがポイントになります。そこでポイントとなるのが、すべての顧客が同様に持っている「共通的な事前期待」にきっちり応えることです。顧客にしてみれば、共通的な事前期待に応えられることは「当たり前」であることが多いため、これにちゃんと応えられなければ満足度が下がり、クレームや苦情にもなります。失点をなくすためには、共通的な事前期待にきっちり応えられるように、一律なサービスを磨く必要があります。この場合、サービス提供者のアクションのバラツキは「悪いもの」となります。つまり、失点をなくす目的でサービスの均一化に取り組むのであれば、「アクションのバラツキ」は無くした方が良いといえます。
そこで、マニュアルやチェックリストを活用して、組織的に抜けやムラをなくす取り組みがよく行われています。また、減点式のサービス品質チェックや失敗事例の共有、バラツキをなくすための教育指導や管理徹底など、「失点撲滅型マネジメント」に力点が置かれることになります。
ただし、サービス競争が過熱している今の時代、「失点をしない」だけで顧客から選ばれ続けることはできなくなりました。また、これまで失点をなくすための取り組みを十分に進められてきている企業も多くあります。そこで、これからより重要になるのが、「得点を増やす」ための取り組みです。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2023.03.07
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新