/地球環境も大切ですけど、まず自分の体を大切にしましょうよ。そうして、いつまでも元気で長生きしてくださいね。それがみんなの願いなんです。/
「言われてみれば、そうかも……」
「だからさ、冬場でも暖房がいらないところを探してたんだよ」
「ああ、そういえば、親分、もともとトルコの出で、その後、南イタリアで暮らしていたんでしたね」
「いや、どこでもいいんだけどね」
「でも、夏場に冷房するところもダメですよ」
「そういうことになるな」
「それから、街中や目立つところもダメ。場所が知られて有名になってしまったら、年がら年ちゅう観光客が来て、子供のオモチャ作りどころじゃなくなってしまうから」
「うむ、それもそうだ」
「そうなると、世界中、そんな都合のいいところなんか、そうそうありませんよ」
「こまったな……」
「あ、そうだ、親分、中東の砂漠ほうはどうです?」
「それこそ、暑いんじゃないのか?」
「それが、うちらと同じ青い一族で、すっごいでっかいやつが、砂漠で壺の中に住んでるんですよ」
「壺? 大男が壺の中なんかに住めるのか?」
「ええ。でも、ランプだったかな。まあ、なんにしても、あれ、うまく熱気を逃がして、中はけっこう一年中、快適なんだそうです」
「ああ、地下式なんだろうね。トルコや南イタリアでも、そういう家を見たことがあるよ」
「それなら、話がはやい。どこか、いいところがないか、あいつに聞いてみましょうか?」
「うむ、よろしくお願いするよ」
「じゃあ、さっそくメールしてみますね。で、トナカイたちはどうします?」
「いっしょだとまずいのか?」
「え! 砂漠になんか連れて行ったら、サンタがトナカイを虐待!とか言って、大騒ぎになってしまいますよ。それに、あいつら、近ごろ、重すぎる! どうにかしろ! って、ただでさえ不満だらけなんだから」
「そうなのか。じゃあ、しかたない。たしかに彼らは、ここのままの方がショウに合ってるだろうから、こっちに置いていこう」
「まあ、心配ないですよ。あっちにはあっちで、空飛ぶラクダとか、いると思いますから。それも、彼に聞いておきますね」
「うん、そうだな。たのむよ。でも、ソリはどうしよう?」
「それも、ダメですね。砂漠じゃ荷車だって砂にめりこんじゃって、ムリなんだから」
「じゃあ、みんな、どうしてるんだ?」
「さあ、わたしもよく知りませんが、うちらの青い親族は、じゅうたんに乗ってましたね」
「じゅうたん? 敷物の?」
「ええ、あれもうまくやると、風に乗ってけっこうな速さで飛ぶらしいです」
「へぇ、そんなことができるのか。すごいな」
「……」
「どうした?」
「いや、もうあいつから返事が来たんですけどね……」
物語
2018.12.21
2019.12.17
2020.08.01
2020.12.23
2021.04.17
2021.12.12
2022.12.14
2022.12.28
2023.12.19
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。