米共和党予備選挙でリズ・チェイニー議員が落選したことの意味合いは小さくない。共和党の劣化と共和党支持者の堕落を象徴するものであり、世界の混乱の火種を育てるものでもある。
チェイニー氏が選挙戦で掲げてきたのは、合衆国憲法を守る責務と、2020年の大統領選が不正選挙によって「奪われた」とするトランプ氏の虚偽主張への反対だ。同氏とその支持者らがいかに民主主義を脅かしているかを指摘してきたのだ。
客観的に観ればトランプの主張は荒唐無稽であり、チェイニー氏の主張のほうが歴史の真実として残るだろう。でも今の共和党の幹部は(連邦議会襲撃事件直後はトランプ離反の兆候を見せたものの)、トランプ支持者の多さと威勢のよさ、そして刺客を送られて選挙に敗れる元同僚たちの姿を見て完全に腰砕けとなってしまい、チェイニー氏を党ナンバー3の座から引きずり下ろしたのだ。その上で、トランプの我が物顔のやりっ振りにも知らん顔を決め込んでいる始末だ。残念なことに今の共和党は腐っている。
本来、共和党というのは伝統的に「健全な保守主義、少ない規制、小さな政府」を主張する誇り高き政党である。米国民の健全な独立心に訴え、そのベースには米国の自由民主主義自体への信頼に根差した草の根民主主義があったはずだ。民主党のような安易な公共工事や補助金のバラマキといった安易な人気取り政策に走らない健全さが、この政党のよさだったはずだ。
しかし今の共和党はその本来の自由民主主義の擁護者としての立ち位置を忘れ、自分たちの選挙のためにトランプ支持者のご機嫌取りしか頭になく、真っ赤な嘘と分かっているトランプ派のフェイクトークに頷くしかない、劣化した政治家の寄せ集めになってしまっているのだ。
もっと愚かなのは、共和党の今の支持者の大半を占めるトランプ支持者たちだ。腐敗した途上国ならともかく、そして現職の大統領だったトランプ側が企むならともかく、挑戦者であるバイデン側が米国の選挙で「選挙を盗む」などということを物理的にできる訳がない。そして実際、具体的な手口についての仮説すらトランプ陣営は提示できず、単に「盗まれた」と主張しただけだ。完全な負け犬の遠吠えだったのだ。
それにも関わらず共和党員の約7割は、2020年の大統領選が「不正選挙によって盗まれた」というトランプ陣営の荒唐無稽な主張を支持し、多くの州での予備選で民主主義のために勇気を振り絞って反トランプの旗を立てた、数少ない現職の共和党議員を落選させてきた訳だ。完全に脳が腐っている。
小生は昔テキサスに住んでいた関係で、米国中南部の人たちの心情を少しは分かる。彼らは保守的かつ温厚で、宗教心と人情に厚く、頑固だ。そのため銃規制や中絶には反対、大きな政府にも反対という伝統的な共和党の政策に強く共鳴する(都市部のインテリは民主党支持だが、所詮は少数派だ)。
社会インフラ・制度
2022.04.27
2022.05.25
2022.06.15
2022.07.21
2022.08.26
2022.10.26
2022.12.21
2023.01.25
2023.02.01
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/