コロナ禍は、仕事の仕方の変化だけではなく、仕事への向き合い方、そして将来に対する「自分自身のあり方」についても考えさせられたし、大きな変化があった。内閣府の調査を見ても、「職業選択・希望の変化」について「まだ具体的ではないが将来の仕事・収入について考えるようになった」と答えた人は多い。仕事のやり方、バリューチェーンのプロセスが変わり、これからの社会のあり方に、自分が対応できるのだろうか、これからはどのように自分を作り上げていけばいいのかと、私も含め多くの人が感じたと思う。 自分をどう作り、市場に対して価値のあるものとして訴求していけばいいのか、つまり、今風の言葉で言う「セルフブランディング」をどう組み立てていけばいいのかについても、大きな転換となった人も多いのではないか。
2008年に出版された、スティーブン・MR・コヴィーの「スピード・オブ・トラスト」という書籍がある。「7つの習慣」で有名なコヴィーの長男が著したこの本は、社会においては「信頼」が重要であり、信頼がないばかりにコストもかかり、スピードも遅くなってしまう。何かを成功させようと思えば、まずは信頼が必要となる。信頼と一言で言っても、まずは自分自身の信頼性の問題から始まり、人間関係における信頼、組織における信頼、社会における信頼と順を追って信頼を築いていく必要があると説いている。
このなかで、「信頼性の四つの核」と名付けられたものがある。信頼に足る人物になるには、「四つの核」が必要だというわけだ。その四つとは、「誠実さ」「意図」「力量」「結果」だ。
1.誠実さ
誠実さというのは、正直さや高潔なことを意味することが多いが、裏表がなく、有言実行(言っていることとやっていることが同じ)であることが、大事なことだ。人としての素養の部分であると言える。また、自分の価値観や信念に従って行動する勇気を持つこと、価値観や考えと行動が常に一致している(一貫性がある)ことも誠実さに含まれるだろう。
2.意図
人としての素晴らしい素養があっても、行動の背景となる意図・動機に問題があると信頼にはいきつかない。また、自分だけの利益のためだけではなく、他者への貢献する動機があることも信頼につながる意図だろう。仕事に対する目的とは何かということとも言える。
3.力量
書籍では「力量」とあるが、いわゆる能力のことだ。仕事を一緒にやるうえでその人を信頼するのは、その人が能力を持っているからにほかならない。アウトプットのための才能、態度、スキル、知識、結果を出す手段を持っていない人を信頼することはできない。
また、仕事に価値を生み出すための豊富な専門的な知識、優れた成果を出すために、持つ知識を生かすスキル、周囲と協力し、より大きな成果を生み出す能力も、この力量に含まれる。さらに、どのような環境の変化が起きても、適応し対応できることも、現在求められる能力のひとつだ、
そして、知識やスキルを磨き続ける努力を怠らないことも重要なポイントだ。
4.結果
能力というのは、結果を出すための手段であることを考えれば、その人が出してきた、過去の実績、結果が能力のエビデンスということになる。十分な実績を上げてきた人ならば、それだけで信頼に値すると感じることもよくある。
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