「理想の職場とは何か?」その定義も、昨今では大きく変わってきているようだ。アメリカでは、特に若い世代(ミレニアル世代+Z世代)を中心に、「意義」や「価値観」を重視し、自分と信条や価値観を同じくする会社で働きたいと望む人が増えている。コア・パーパスとコア・バリューに基づく理想の会社の見つけ方、そして、生涯価値の高い人材を確保するための採用担当者への提言をまとめてみた。
〇貴社にはコア・パーパス、コア・バリューはありますか。
〇貴社の企業文化を一語、あるいは短い文章で表すと何でしょうか。
〇貴社の企業文化で、一番誇りに思っておられるのはどんなところですか。
〇貴社の企業文化として、社員の行動としてどんなことが重んじられていますか。奨励されていますか。
〇貴社の企業文化として、「こんな人にうちの会社には向いていない」という人はどんな人でしょうか。
これらはごく一部の例ですが、その会社の企業文化を知るために、複数の質問をしてみることをお勧めします。
番外編:企業の採用担当者へのアドバイス
最後に、ごく簡単に、企業の採用担当者の皆さんへの私からの提言です。
冒頭で述べたように、アメリカでは、若い世代を中心に「コア・パーパス(企業の社会的存在意義)」や「コア・バリュー(中核となる価値観)」を主要な判断材料として、志望先や就職先を決める人が増えています。「コア・バリュー就活」は今やメインストリームになりつつあるということです。
こうした動きは、今のところ、日本ではあまり目立たないかもしれません。しかし、少なくともここ数年のうちに、若い世代で職を探している人たちが「会社のコア・バリューと自分のコア・バリューとの合致」に注目する時代が来ます。すると、必然的に、企業にとって、「コア・バリュー」が、有能かつ高い社員エンゲージメントを得られる人材を獲得するうえで有力なリクルーティング・ツールになってきます。
そこで、企業の採用担当者の皆さんへの私からのアドバイスは次の三つです。
1.自社のコア・パーパスとコア・バリューを明確にする
3.自社のコア・パーパスとコア・バリューを発信する
3.社外の人たちに、自社の文化に親しんでもらう媒体をつくる
会社のウェブサイト上で自社の「コア・バリュー」を明確に発信することが言うまでもなくスタートラインですが、他にもクリエイティブなやり方が無限にあると思います。たとえばザッポスのような会社は、まだ彼らがごく小さな会社だった時から、「カルチャー・ブック」という社員の「文集」のようなものを作成していました。「ザッポスの企業文化について」ひとこと書いてください、と社員からミニ・エッセイを募集して、それを無編集で載せていました。「カルチャー・ブック」には、社員の言葉だけではなく、ザッポスの歴史や、年間を通じたイベントの写真を掲載するコーナーもあり、その一冊に簡単に目を通しただけで、ザッポスという会社の文化がよくわかるようになっていました。そしてザッポスはこれを、会社に面接に来た人たちや、取引先の担当者さんや、その他の理由で会社を訪れた人たちに無料で配っていました。そればかりではなく、お客さんを含め、希望する人には誰にでも「ギフト」として郵送していました。この「カルチャー・ブック」が、強力なリクルーティング・ツール、ブランディング・ツールとなっていました。
企業文化
2020.03.17
2020.05.29
2020.06.10
2020.06.23
2020.08.20
2020.12.22
2020.12.23
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。