政策担当者は「できない理由」を並べ立てるのではなく、「できることは何か」に知恵を絞って欲しい。現場は「今のやり方、今の体制では『とても無理』」と言っているのだ。「ならばやり方と体制を変えればよいのではないか」と頭を切り替えて欲しい。
これまた最近の報道で知ったことだが、日本のメーカーでも検査自動機を実用化しているところがある。ただし欧州メーカーのOEM製品として下請けして海外輸出しており、国内では使われていないそうだ。なんと皮肉な。厚生労働省がこの国内メーカー(プレシジョン・システム・サイエンス)の全自動検査機と試薬キットを急ぎ認可することで、日本の各衛生研究所や民間検査機関でもこのメーカーから購入できるようになるのだ。政府が本腰なのか、その覚悟が問われる。
そして第三のボトルネックが検査機での判定読み取りだ。ウイルスの遺伝子情報が増えているのかを読み取るのだが、検査機ではアナログの曲線が幾つか表示されるだけで、YES/NOとか感染確率〇〇%とかで表示される訳ではない。したがってこれは経験のある臨床検査技師が「読み解く」必要があるのだが、それができる技師の数が絶対的に少ないので、明らかなボトルネックになっている。
では韓国ではどうやって臨床検査技師を短期間で増やしたのだろうか。いや、韓国はまったく違うアプローチを採ったのだ。彼らはアナログ表示の検査機に外付けできるPC用モニタリングソフトを開発し、デジタルで表示させている。3つの指標が揃って「陽性」を示すならトータルで「陽性」と判断できる、といった具合だ。
これによって長年の経験が必要なくなってしまった。未経験のスタッフでも注意深くさえあれば、即座に間違いない判定ができるのだ。これまた実に合理的だ。
ハイテク国らしいやり方であり、日本で発想、実現されなかったのが悔しいくらいだ。これは技術的には難しくないはずなので、日本のITベンダーにもすぐに開発できるだろう。そして検査機本体ではないモニタリングソフトなのでそれほど規制は厳しくないはず。必要なのは、やはり政府の覚悟だ。
【追記】ここまで書いてきたことに対し、重要な追加事項が直近で判明した。日本各地の大学を中心とする研究機関には、現在PCR検査機関として指定されている各地の衛生研究所の合計の数倍に匹敵するPCR検査能力がすでに存在すると、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授・所長が指摘している。民間検査会社と併せてそれらのリソースをフル稼働させれば、1日2万件どころか10万件規模にまで一挙に能力拡充させることが可能だということを、山梨大学の島田眞路学長(専門:皮膚科学)が何度も指摘し、政府の対応を批判している。
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/