「オフィスにおける労働生産性を向上させるために必要なこと」シリーズの第3弾。 付加価値に直結するような「集中思考」を要するクリエイティブな要素が強い仕事の場合、「兼務」のタスクが増えるほどパフォーマンスは落ちるのは当たり前。「兼務」の数を減らした上で、「集中思考」を阻害する会議・電話・メールを極力敬遠する工夫をするべきだ。
しかしそれは深い「知的思考」があまり必要とされない、手順が比較的明確で「段取り」さえ正しく行えば完成できる、「作業」的なタスクを依頼する場合の話なのだ。新規事業の検討など、前例がなくクリエイティブでロジカルな深い思考を要する場合には必ずしも当てはまらない。
ではどうすればいいのか。もうお分かりだろう。第一に必要なのは、兼任プロジェクトを減らすことだ。優秀な人だからと別のプロジェクトの重荷をどんどん肩に載せる代わりに、プロジェクトの検討期間をぎりぎり短く区切って、どんどん完了させてから新しいプロジェクトを担当させる。そしてできるだけ違う人でタスクを分担させるのだ。これは仕事をアサインする側の責任者が肝に銘ずべきことだ。
そして職場環境として思考を中断する要素を極力減らすことが不可欠だ。会議は最小限とする。そのために絶対呼ばなくてはならない人以外は参加招集しない(小生の別コラム記事を参照されたい)。
そして電話を受けるタイミングを、「集中思考」時間帯を外した、限定した時間帯だけと決めておく。それ以外は留守電にしておき、必要な人には後ほど折り返し電話すればよい。オフィスの固定電話も(ボイスメール機能を搭載するだけでいい)、携帯電話も同様だ。
忙しい中でパフォーマンスを上げる必要のある「偉い人」たちは秘書を介することで、こうした「雑音」を避けるようにしているのだ。そこまで偉くない人は自分で工夫すべきだ。
メールも同様に「集中力」を下げる元凶だ。「集中思考」時間帯にはメールをチェックしてはいけない。したがってメール着信を知らせる機能は問答無用で外すべきだ(マイクロソフトやPCメーカーなどはこうした機能が「コミュニケーションを活発化しオフィスの生産性を向上する」などとうたうが、決して騙されてはいけない)。
こうした「雑音」を遮断する仕事のスタイルは現代の「コミュニケーション最重視」の風潮下では主流ではないため、その採用を躊躇する気持ちは理解できる。いわく「お客から問い合わせが入るかも知れない」「重役からのお誘いを逃してしまうかも知れない」「協調心がない奴だと思われて職場で浮いてしまう」…云々かんぬん。
もちろん、問合せ窓口担当や、職場の雑用を一手に引き受ける最下っ端の人にまではお勧めはしない。また、「連絡の取りやすさ」を売りにしている営業担当者や、社内の事情ハブを自負している人にも向かないスタイルだ。
しかし、思考の深さがアウトプットの違いをもたらすクリエイティブな知的生産で成果を生むことが何より求められている、現代の「できる」ビジネスパーソンにならば、是非お勧めしたい仕事スタイルだ。
業務改革
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
