「オフィスにおける労働生産性を向上させるために必要なこと」シリーズの第3弾。 付加価値に直結するような「集中思考」を要するクリエイティブな要素が強い仕事の場合、「兼務」のタスクが増えるほどパフォーマンスは落ちるのは当たり前。「兼務」の数を減らした上で、「集中思考」を阻害する会議・電話・メールを極力敬遠する工夫をするべきだ。
ちなみに一般の会社では偉くなればなるほど多くの会議に出席することになるが、普通の人ならこの切り替えがうまくいかずに会議での思考や発言が凡庸になっていくことで、上級役員の覚えが悪くなり出世の道が狭くなる(とはいえ、そうした頭の切り替え能力だけで役員になるかどうかが決まるなどと短絡してはいけない)。
会議での思考や発言だけではない。特に我々が支援する新規事業のように前例のないことを検討する場合、むしろもっと大事なのは個々のメンバーが自分の頭で考え、調べて分析し、検証する部分だ。そしてこの思考の時間の質はどれだけ集中できるかに掛かっている。
そして本当に集中して思考することを繰り返すと、その時にはいいアイディアを思いつかなくても潜在意識下で脳が考え続けるのだろう、何かの拍子に(床に就いたり、お風呂に入っていたりする時などに)いいアイディアが「降りてくる」ものだ(「エウレカ!」の瞬間である)。
集中モードが本当に高まってエンジンが掛かるのには、ある程度のウォーミングアップ時間がどうしても必要だ。そして集中モードが続く時間は通常長くない。一般の人で精々1時間から1時間半である(研究肌の人や思考慣れした人だと最大3~4時間持つかも知れない)。ましてや会議や電話で一旦中断されると集中モードは途切れ、再度高めるのにはウォーミングアップ時間がまた必要なのだ。
したがって、一日の間にどれほど集中モードの時間を確保でき思考を深められるかというと、実に心許ないことが分かるだろう。
たとえ一つのテーマに専念している人でも会議や電話で中断されるとその度に集中モードは消滅し、思考の質は著しく低下する。ましてや幾つもテーマを抱えている人は会議や電話で中断されることがそれだけ頻繁になり、残った思考時間をそれぞれのテーマが取り合って、わずかしか思考を深めることができない結果となるのだ。これでは「エウレカ!」は望めないのは当然だ。
幾つもテーマを抱えているメンバーが「済みません、時間がなくて」と申し訳ない様子で謝りながら、実際にあまり考えてこなかったことが歴然の成果を報告することは少なくない(小生の別コラム記事)。こんなことではせっかく選抜されたのにまともなパフォーマンスを発揮できないし、周りのメンバーの足を引っ張る結果にしかならないので、小生はそうしたメンバーに重要なタスクは振らない。
世間では「忙しい人に頼め」とよく言われる。つまり仕事ができる人ほど忙しいので、そうした忙しい人にあえて依頼したほうが結局はいい結果をもたらすという話だ。それが正しいケースも確かにある。
業務改革
2015.12.24
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/