14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第2章|成長〉第3話
Rさんは立派な目標は立てられないと言います。そもそも目標は立派でなければならないと思うから、心の壁も大きくなるのです。目標は小さなことでかまいません。小さくとも自分で目標を立てて取り組んでいく。それを繰り返す「心の習慣」をつくることが、いまいちばん大事です。
あなたのまわりには「難度10」の目標をどんと打ち立てて派手にやってしまえる人がいるかもしれません。しかし、自分はそうはできない。ならば、「難度1とか2」の目標を立てて、それを何回も積み上げていく。それでよいと思います。むしろ、それをやれる人が最終的には、健やかに、高く、遠くへ到達することになります。
プロ野球の世界で活躍するイチロー(本名:鈴木一朗)選手は、数々の大記録を打ち立てています。たとえば、米国メジャーリーグシーズン最多安打262本(2004年に記録)、日米通算4000本安打(2013年時点)など。これらは今後、他の選手が容易に追いつける数字ではありません。それほどまでに、イチロー選手は高く、遠くまでのぼっていったのです。
けれどイチロー選手とて、この大きな数字をいきなり目標にしていたわけではありません。「次の目標は、次のヒットです」と本人が言うように、あくまで1本、また1本という目標達成の積み上げによって、偉業はなされたのです。彼はこうも言います───「ちいさいことをかさねることが、とんでもないところに行くただひとつの道」と。
ですから、Rさんは小さな目標を立てるところから始めたらどうでしょう。それをだれが見ていようと見ていまいと地道に続けていくことです。それを「心の習慣」にしてしまえば、負担に思うことはなくなります。そして何年か経ったときに、ふと振り返ってみてください。自分が結果的にとても大きな壁を乗りこえたほどの位置に来ていることに気づくはずです。「心の習慣」がそうやってふつうの人を、健やかに、高く、遠くまで行かせたのです。目標を立てることを避けてきた人やサボって来た人には、もうとうてい到達できないようなところまで行ってしまえるのです。
最後に3点め。S君もRさんも、目標をもたない過ごし方はよくないかどうかを気にしている様子です。これは他人によいわるいをきく問題ではありません。自分が決める問題です。目標を立てずに過ごしていく生き方をあなた自身は、美しいと思うか、思わないか、です。あるいはこう考えてみるのもひとつです───なにかの病気であと1年しか生きられない状況になったとしましょう。そのときあなたは、なにかをめざさずにだらりと1年を過ごすでしょうか───?
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。