14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第3章|価値〉第4話
また、美しいは見て感じるだけではありません。「美しい音」のように耳で聴く場合もあります。あるいは舌で味わう場合もあるでしょう。食べ物が「おいしい」を、漢字では「美味しい」と当てます。
このように「美しい」とは、物や人の外面にあらわれるなにかについて言うことが多い。ところが、わたしたちは人の内面にも目を向けます。内面が澄んでいて、善いことをすすんで行う人のことを「あの人は心が美しい」と言います。人の内面は目に見えませんが、目に見えないものを心で美しいと感じるのです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、ものごとが美しいと感じるとき、わたしたちはそこからなにを感じ取っているのでしょう。───それはおそらく、ものごとが持っているなにか「良いこと」であったり、「すぐれていること」であったり、あるいは「善いこと」、「生きる力の根源に近いこと」ではないでしょうか。
ここでの「良いこと」とは、たとえば、快さを与えてくれる、清らかである、整っている、秩序があるなどのような状態をいいます。そうした性質・状態が美しさに通じているというのは、次のようなことを想像するとわかりやすいかもしれません。
○快さを与えてくれる
→ショパンの作ったピアノ曲の旋律は美しい
○清らかである
→山の雪解け水が集まって川をつくる。
そのキラキラとした流れは美しい。
○整っている
→朝礼の列が縦横にぴしっと整っていると美しい。
○秩序がある
→機械式腕時計の裏ぶたを開けると、小さな部品が秩序をもって正確に動いている。
それは美しい。
○うっとりさせる
→その国民的アイドルは美しい顔だちで多くのファンを魅了した。
○理にかなっている
→鳥が飛ぶ姿は美しい。
それは自然の法則にさからわない無駄のない動きだから。
○機能的である
→扇子(せんす)は広げれば風を起こす大きな形となる。
そして蛇腹(じゃばら)折りにして棒状に収納できる。
この機能的な形は美しい。
また、「すぐれていること」というのは下のような性質・状態のことで、これもまた美しさに通じています。
○能力がたくみに発揮されている
→何十年もの修行を積んだ職人さんの手の動きは美しい。
○研ぎ澄まされている
→アインシュタインの論文は明晰で、導き出された法則の数式は美しい。
○品格がある
→この書は実に美しい。書いた人間の気高い精神が込められている。
さらに、「善いこと」というのは次のような性質・状態のことで、美しさに通じています。
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。