概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
◆客観が「優」で、主観は「劣」か
コンセプチュアル思考では基本スタンスを4つあげています。その4番目は次のようなものです―――
4:客観を超えて主観を持つ
冷静な客観は重要。ただそれは大前提であるだけ。コンセプチュアル思考の目的は、概念を起こすこと、意をつくること、物事に意味を与えること、自分にとって最善の解釈を生み出すこと。その思考による答えは人それぞれのものになってよいし、ならざるをえない。持つべきは客観を超えたところで研ぎ澄ませる主観。
ビジネスの現場では、「それって主観的な見方だよね。もっと客観的にながめないと……」といったようなやりとりがよくあります。このことは暗に、客観が主観より優れていることをにじませているようです。しかし、はたしてそうでしょうか。ときには客観より主観が大事な場合もありそうです。
往々にして主観的な意見がダメ出しされるときは、もののとらえ方が感情的に偏っていたり、浅い経験からの決めつけであったりします。確かにそういうときは、客観に立つことが求められるでしょう。しかし、ビジネスやキャリアにおいて、客観が最終的に目指すべき態度ではありません。むしろ、客観を超えて意志的に主観を持つことが目指すべき態度です。そうでなければ、ほんとうに深く強い仕事はできませんし、心から納得のいく独自のキャリアは具現できません。
「コンセプチュアル思考」研修では、物事の定義化セッションを設けています。さまざまな題材を与えて「〇〇は□□□である」と自分の言葉で言い切る訓練をします。題材にするのは、例えば次のようなもので───
・「仕事」とは何かを自分の言葉で定義せよ。
・「事業」とは何かを自分の言葉で定義せよ。
・「成長」とは何かを自分の言葉で定義せよ。
・「創造」とは何かを自分の言葉で定義せよ。
・「リスク」とは何かを自分の言葉で定義せよ。
・「自律」とは何かを自分の言葉で定義せよ。
(その場合、「自立」とどう違うのか)
・「仕事の幸福」とは何かを自分の言葉で定義せよ。
(その場合、「仕事の成功」とどう違うのか)
題材に使うのはたいていこのようなビッグワード(大きな言葉)です。ビッグワードであるほど個人によってとらえ方が異なり、実に面白い定義の差が出るからです。その差はまさに、人が内面に蓄えた経験の質と量、物事への視点の角度を入れる鋭さ、本質を見抜いて言語化する巧みさ、働くこと・生きることへのまなざしの差です。短く凝縮した定義文には、各々の「観」というものがいやがうえにもあぶり出されてきます。
次のページ◆自らの解釈が自分の生きる世界を決める
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
2016.04.04
2016.04.13
2016.04.20
2016.06.02
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。