概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
本連載も、PARTⅠ:概要編が今回で終わりとなります(次回からはPARTⅡ:実践ワーク編をお送りします)。
ここであらためて、「コンセプチュアル思考」の定義、思考スタンス、骨格となる思考フロー、基本となる思考スキルをまとめておきましょう。5つの思考スキルについてはこれまで触れていませんが、PARTⅡで順次説明していきたいと思います。
〈コンセプチュアル思考の定義〉
「コンセプチュアル思考」についての一般的な定義はまだありません。本連載なりに表現するとこうなるでしょうか。
〈4つのスタンス〉
コンセプチュアル思考の構えは次のようなものです。
〈3つのフロー〉
コンセプチュアル思考の骨格となるのは、「πの字」思考プロセスと呼ぶ次の3つの流れ
〈5つのスキル〉
コンセプチュアル思考の基本的技術は次の5つ
1番目の「定義化」は、端的に言うと「〇〇とは■■■である」と表わすことです。
例えば、あなたは「仕事とは■■■である」「事業とは■■■である」「成功とは■■■である」「幸福とは■■■である」「成功と幸福の違いは■■■である」……といった形式で、ものごとについて自分なりの簡潔な定義ができるでしょうか。物事の本質を見抜き、それを的確に凝縮してとらえる技術を磨くことが「コンセプチュアル思考」の目的の一つです。
2番目の「モデル化」は、物事の仕組み(構造や関係性)を単純化してとらえ、図的に表わすこと。
例えば、「粋(いき)」とはどういうことでしょう。粋とはおおむね、「あかぬけた色っぽさ・かっこよさ」の意味で使っている言葉ですが、それを構造的に図化してみせた人がいます。
右の図は、哲学者の九鬼周造が1930(昭和5)年に著した『「いき」の構造』(岩波文庫)で提示したモデルです。「粋」などという、曖昧きわまりない概念をよくぞこのような姿で示せたものだと感服します。本講義では、概念を図的に表現する形式を9種類に分け、解説していく予定です。
3つ目の「類推」は、例えば物事Aと物事Bの間に類似性を見出し、その似ている点をもとにして何かをおしはかることです。論理用語では「アナロジー(analogy)」と言います。コンセプチュアル思考に強い人は、物事Aで引き出した本質を物事Bに適用することがうまい人です。
また、比喩表現も類推のひとつです。複雑な物事を何か簡単な喩え話にしたり、たくみに喩えられた表現を豊かに解釈できたりするのも、コンセプチュアルな能力が鍛えられてこそです。
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。