概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
私たちは長く働いていく中で、実にさまざまな出来事に遭遇し、いろいろな経験をしていきます。そうした過程で技術的成長や精神的成長といったものがあるわけですが、どうもそこには「成長上手な人」と「成長ベタな人」との差があるように思われます。
雑多な経験をいくつもいくつも重ねているのにあまり成長に結びつけられない人。逆に、経験の数や幅は限定されているものの、そこからぐんぐんと成長していく人。そうした個人差はいったいどこから来るのでしょう───。理由はさまざま考えられますが、本稿では「コンセプチュアル思考」の観点から切り取ってみることにします。
◆雑多な事象・経験の中から本質を抜き出す「抽象」の力
コンセプチュアル思考とは、「コンセプチュアル=概念的な」という語が示すとおり、中軸は概念化の思考です。それがどんなものかイメージしていただくために、一つ簡単なワークを紹介しましょう。
コンセプチュアルワーク:「成長とは何か」を考える
〈作業1〉
これまでの仕事経験のなかで、「自分が成長できたな」と思える出来事・エピソードをいくつかあげてみましょう
〈作業2〉
「成長とは何か」「成長についての解釈」を自分なりの言葉で表わすとどうなるでしょう
まず、これまで遭遇してきた雑多な出来事を振り返り、自分を成長させてくれた経験を見つめなおします。そしてその経験から本質的なことを引き出して、成長とは何かを短い文言に凝縮します。この作業1→作業2の思考の流れがいわゆる「抽象化」です。ちなみに、どういった回答が出てくるかといえば次のようなものです。
コンセプチュアル思考がつくり出す答えはこのように多分に主観的です。コンセプチュアル思考は、サイエンスが目指すような論理的思考と違い、ある客観的な唯一無二の解を求める思考ではありません。「conceptual」のもとになっている動詞は「conceive」で、この語は「つかむ・内に取り込む」という意味です。その物事が何であるかを人それぞれにつかんでいくことがコンセプチュアル思考です。ですから主観的でいっこうにかまわないのです。
しかし、そのときに客観を軽視するわけではありません。客観をくぐり抜けたところで表現される主観は、いやおうなしに分厚さや堅固さをもったものになるからです。
◆「π(パイ)の字思考プロセス」
そして次の作業に移ります。
〈作業3〉
作業2の定義をふまえて、「成長」を図や絵で表わしてみましょう
〈作業4〉
成長を持続的に起こすための「行動習慣」としてどのようなものが考えられますか。3つあげてみましょう。
作業3は概念化を深める流れです。言葉だけでなく、図的に概念を表わそうというものです。概念をビジュアル的に描くと、言葉の定義では表わしにくかった全体の構造や要素間の関係性が見えやすくなります。この作業は別の言葉で言うと「モデル化」です。
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。