概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
「コンセプチュアル思考(conceptual thinking)」は、すでに何か一般的な定義が確立されているものではありませんが、ひと言で表現すると
「その物事が何であるかをとらえる思考」と言っていいでしょう。
「コンセプト|concept」というと、何か企画を起こすときの軸となる考え方を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、それは狭い意味で、この語は本来「つかむ・内に取り込む」という意味を持っています。
私たちは感覚器官を通して物事からさまざまな情報や信号を受け取ります。そして何かに意識を向けた瞬間、過去の経験や知識と照らし合わせて、それが何であるかをつかもうとします。さらには、物事の奥にひそむ本質や原理をみようとしたり、物事に意味を与えたりします。そうしたことを繰り返すうちに、私たちは自分の中に「観」(=ものの見方)をつくっていきます。これら人間の広く深く豊かな認識活動をカバーする言葉が「コンセプチュアル」です。
では、「成功」や「失敗」ということを例にとって説明していきましょう。
私たちはそれぞれに頭の中で「成功」がどんなことであるか、「失敗」がどんなことであるかを(概念として)つかんでいます。それは以下にあげるような“コンセプチュアルに考える”ことを通してつかんできたものではないでしょうか。
〈抽象〉
私たちは生きていくうえで、ことがうまくいったり、いかなかったりすることを経験します。また他人も同じようにうまくいったり、いかなかったりする様子をみます。
そこから、ことがうまくいくときの要素は何だろう、うまくいかないときの要素は何だろうと考えます。
こうした要素を引き抜いてそこにある本質や共通性を見出そうとすることを「抽象(ちゅうしょう)」といいます。抽象はコンセプチュアル思考のひとつです。
〈定義する〉
成功や失敗についての本質や共通性を見出すと、私たちはそれにもとづいて
「成功とはこういうことである」
「失敗とはこういう状態のことをいう」
といったように自分の中で簡潔に言い表そうとします。
つまり〈定義〉です。定義もまたコンセプチュアル思考のひとつです。
〈原理を見出す〉
また、私たちは引き抜いた本質・共通性にもとづいて法則や原理を見出そうとします。
これもコンセプチュアル思考のなせるわざです。
〈パターンに分ける〉
成功や失敗についての本質や共通性をとらえると、成功や失敗にはいろいろなパターンがあることがみえてきます。
「成功A型」「成功B型」・・・
「失敗パターン」X、Y、Z・・・などのように。
類型化もコンセプチュアル思考のひとつです。
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。