コンセプチュアル思考〈第13回〉 物事から意味を掘り起こす

画像: Career Portrait Consulting

2016.08.23

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第13回〉 物事から意味を掘り起こす

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

「コンセプチュアル思考」は端的には、物事の本質をつかむ思考です。ここでいう物事の本質とは、物理的な原理をさす場合もあれば、意志的な意味・価値をさす場合もあります。本記事では、特に後者、すなわち物事から本質的な意味・価値をつかみとる訓練の一つを紹介したいと思います。

例えば、私たちが日々取り組む最大かつ最重要の物事である仕事・キャリア。この仕事・キャリアからどうやって意味・価値を掘り起こすことができるのでしょうか。このテーマに対して、安直に「なぜ働くのか?」という自問を投げかけてみてもあまり有益ではありません。なぜなら、こうした漠然とした問いでは、漠然としか考えられず、頭がうやむやになってしまうだけだからです。問いには適切な切り口が必要です。

「コンセプチュアル思考」では、意味や価値を考えるために、さまざまに切り口を入れた問いを行ないます。その一つが『私の提供価値宣言』と名づけたワークです。ワークシートには次のような一文が印刷されています。


私は仕事を通し
「          」を売っています。

さて、あなたはこの空欄に何という言葉を入れるでしょう。

自分は自動車メーカーに勤めているから、
『私は 「クルマ」 を売っています』

自分は介護事業会社に勤めているから
『私は 「介護サービス」 を売っています』

というような答えを求めているわけではありません。この空欄には、自分が仕事を通じて提供したい「価値」を書いてほしいのです。なぜなら、私たち一人一人の働き手は、目に見えるものとして具体的な商品やサービスを売っていますが、もっと根本を考えると、その商品やサービスの核にある「価値」を売っているからです。

例えば、保険会社の販売員は根本的には「経済的リスクを回避する安心」を売っていると言えます。また、新薬の開発者であれば、その仕事を通して「その病気のない世界」「人を健康にするための発明・発見」を売っているととらえることができます。財務担当者は、会社に対し「数値による経営の判断材料」を売っているのかもしれません。

スポーツ選手であれば「筋書きのないドラマと感動」を売る人たちでしょう。コンサルタントは「課題解決のための情報と知恵」を売っています。料理人は「舌鼓を打つ幸福の時間」で、コメ作りの農家の人なら「生命の素」と言っていいかもしれません。

いずれにせよ、このワークシートの空欄には主観的で意志的な言葉が入ります。この言葉づくりをじっくりやる過程で、私たちは自分自身がどんな職業人でありたいか、仕事にどんな価値軸を貫きたいのかが見えてきます。逆に言えば、この提供価値がうまく書けない人は、それだけ自分の仕事・キャリアに対して、明快な価値やビジョン、意志を持っていないということになります。


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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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