概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
【例題】
「仕事とは何か」を一枚の図(絵)で描きなさい
「仕事」は大きくて曖昧な概念です。あなたはこれをつかむのに、どんな根源的要素を掘り起こし、抽象して、本質を洞察しようとするでしょうか。そして、構造的にどう表現するでしょうか───。ここでは3種類〈空間的・時間的・混合的〉の図にまとめていく思考プロセスを共有します。前回はこのうち「空間的な表現」をみました。今回は「時間的」および「混合的」な表現をみていきます。
〈2〉時間の変化でとらえる
時間的な観点から仕事はどう図化してとらえられるでしょうか。例えば、私たちはいろいろな仕事を思い浮かべるとき、その仕事をやる前とやった後で価値創造がなされていることに気がつきます。その価値創造にはいくつかの種類がありそうです。
一つには「増減させる」仕事。たとえば、物を売ったというのは販売量を増やした仕事ですし、物を速くつくれるような工夫を施したのは生産性を増した仕事です。何か機能を付け足したのであれば性能を増した仕事になります。
これを記号的に表せば、「A→A+」です。
しかし、仕事というのは、プラスの価値創造に終えられるときばかりではありません。時には下手な仕事をし、かえって仕事前より価値を下げてしまうこともあります。つまりマイナスの価値創造「A→A−」の状況です。こうしたことを考え合わせると、この種の仕事は「A→A±」と表現できそうです。
また、「変形する」仕事もあります。
記号的に書けば、「A→B」です。
外観を変えたり、やり方を変えたりするのはこの類の仕事になります。組み合わせる、組み替える、編集する、もそうです。ときにはつたない仕事をしたことで余計に事が散らかるときがありますが、それもある意味、変形型の仕事といっていいでしょう。
さらにもう一つ、忘れてならないものに「創出する」仕事があります。新規に起こす、発明する、既存の枠を打ち破るアイディアを発案する、オリジナルなものを開発する、などです。
これは「0→1」の仕事といえます。
このように、「仕事とは何か」を時間的な変化の観点でモデル化すると、次の3つで表現できそうです。
仕事とは、物事を
1)「A→A±」〈増減させること〉
2)「A→B」〈変形すること〉
3)「0→1」〈創出すること〉
仕事というのはこれら3つの複雑微妙な組み合わせだと考えると、それを表わすには3つの円のベン図が適当でしょう。
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。