概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
前回、類推(アナロジー)とは、物事Aと物事Bの間に類似性を見出し、その似ている点をもとにして何かをおしはかることであり、その能力に強い人は、物事Aで引き出した本質を物事Bに適用することがうまい人であることを学びました。ケーススタディ学習やビジネスモデルの横展開も「πの字思考プロセス」による類推のひとつでした。
では、演習をひとつやってみましょう。「ロールモデルを探せ」と題したコンセプチュアルワークです。ロールモデルとは「その役割を果たす模範的な存在」をいいます。簡単に言えば、「あの人のようになりたい」と思い、その人の行動や考え方から学ぼうとするお手本です。「学ぶ」という語は、「真似(まね)る」から来ていると言われるように、だれかにあこがれをもって、その人を真似ることは、人間の学習の原形でもあります。
この演習はロールモデル(模範的存在)の解釈を人だけでなく事物にも広げ、「生き方」「働き方」「事業・商品・サービス」「会社・組織」の4項目に分けて探そうというものです。
【演習】下のワークシート使用
〈1〉具体的なモデルをあげ、
〈2〉なぜそれを選んだのかという模範要素を抽出し、
〈3〉その模範要素をどう現実の自分の活動に応用できるかを考えなさい
単にあこがれるものをあげるだけなら簡単です。子どもでもアイドルグループやスポーツ選手をあげることができます。この演習は、〈1〉~〈3〉の項目をセットで強く書けることが重要です。そこではじめて、コンセプチュアル能力が鍛えられます。もちろんこの一連の思考の流れも「πの字プロセス」です(下図)。さらに、ロールモデルから得るのは行動のヒントだけでなく、情熱ももらおうというのがこの演習の狙いです。情熱は伝染するからです。
私は研修でこの演習を行うとき、受講者の書いたシートを次のような観点でながめています。この作業で試される力といってもいいでしょう。
1)いかに世の中や人間に幅広く関心を持ち、モデルをあげることができるか
→コンセプチュアル能力の「広さ」の観点
2)いかに本質的な要素を抽出できるか
→コンセプチュアル能力の「深さ」の観点
3)いかにモデルに対し情的に共振できるか
→コンセプチュアル能力の「熱さ」の観点
4)いかに意を起こし、具体的な行動に変換できるか
→コンセプチュアル能力の「強さ」の観点
◆補足:「守・破・離」の観点から
この世界を「essence:本質」と「form:形態」という二元でながめると、下図のように、2つの円で内側に本質、外側に形態を描くことができます。ここでは「本質は形をまとい、形は本質を強める」という相互作用がはたらいています。
本章で行っている類推の演習を含め、コンセプチュアル思考では「πの字思考プロセス」によって自分なりの解を創造していくことを訓練します。そのとき重要な点の一つはどれだけの“厚み”の「πの字思考」をするかです。
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。