コンセプチュアル思考〈第17回〉 類推~物事の核心をとらえ他に適用する 

画像: Career Portrait Consulting

2016.12.15

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第17回〉 類推~物事の核心をとらえ他に適用する 

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

今回と次回は「コンセプチュアル思考」の3番目の基本スキルである「類推」についてみていきます。

私たちは大人になって、子どものころ耳に入れた寓話をときどき思い出します。現実の人生の荒波にもまれるなかで、寓話が発していたメッセージが重なるなと再認識するからでしょう。寓話だけではありません。例えばテレビのインタビューで、ある分野の達人が発したコメントに対し「うーん、なるほど名言だ」と感じるときがあります。古典的な寓話や第一級の人物の言葉のなかには、時を超えた道理があって、それを通して複雑な人生を理解することができます。

このような思考の背後には、「類推」がはたらいています。類推とは、物事Aと物事Bの間に類似性を見出し、その似ている点をもとにして何かをおしはかることです。論理用語では「アナロジー」と言います。概念化能力に強い人は、物事Aで引き出した本質を物事Bに適用することがうまい人です。また、比喩表現も類推のひとつです。複雑な物事を何か簡単な喩え話にしたり、たくみに喩えられた表現を豊かに解釈できたりするのも、コンセプチュアルな能力が鍛えられてこそです。

◆寓話の教えを現実生活に役立てる
『魔法使いの弟子』という寓話をご存じでしょうか。ヨーロッパで古くから語られているものですが、これを一躍世界に知らしめたのは何と言ってもウォルト・ディズニー制作のアニメーション映画『ファンタジア』(1940年)です。映像化されたシーンはこんな感じです。

ミッキーマウス扮する魔法使いの弟子は、師匠から水汲みを命ぜられ、両手に木桶を持って家の外と中を往復している。折しも師匠が出かけていなくなり、ミッキーはここぞとばかり、見よう見まねの呪文を箒(ほうき)にかける。すると箒は木桶を両手に持って歩き出し、自分の代わりに水汲みを始める。「これでラクができるぞ」と、ミッキーはソファで居眠りを始める。

……その間に箒はどんどん水をため続け、ついには部屋からあふれ出すほどに。ミッキーは目を覚まし、慌てて箒を止めようとするが、箒にストップをかける呪文がわからない。ミッキーは斧を持ち出して、箒を切り刻んでしまう。ところが切られた破片がそれぞれ一本の箒となってよみがえり、水汲みを始める始末。箒の数は幾何級数的に増えていき、ミッキーは洪水状態の家のなかであっぷあっぷと溺れる……。


さて、この寓話からあなたは何を学び取るでしょう。ある人は「怠け心は結局得にならない」と日常生活への知恵にするかもしれません。また、ある人は「技術は中途半端に用いると危険だ」と自分の仕事のことに当てはめて考えるかもしれません。さらには、これを現代文明への警鐘として受け止める人もいるでしょう。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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