「シェアリング・エコノミー」の代表例は配車サービスのUberと、空き部屋シェアサービスのAirbnbである。いずれも日本市場に上陸済だが、かなりの注目を集めると共に、ちょっとした論議を呼んできた。Uberについては別の機会に回すとして、本稿で採り上げたいのはAirbnbのほうだ。コミュニティにとってのセキュリティの観点から考えてみよう。
「シェアリング・エコノミー」が新しい潮流として世界的に注目されている。欲しい人のために新たにモノを仕入れる代わりに、既に所有している人と必要とする人をつなぐことで、もしくは共同で保有することでニーズを満たすというコンセプトの、有望でユニークなビジネスモデルが続々と生まれている。資源の無駄使いを避けてサービスが提供でき、社会的にも望ましいものだ。
ウィキペディアには、「Airbnbとは、宿泊施設/民宿を貸し出す人向けのウェブサイトである。世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供している」とあり、既に世界中に普及している人気サービスであることが分かる。
Airbnbのビジネスモデルは、宿泊スペースを借りたいユーザー(ゲスト)と、宿泊スペース物件を持つユーザー(ホスト)をつなぐeマーケットプレイスである。取引する「商品」は宿泊スペースというわけだ。ゲストもホストもそれぞれあらかじめ登録(無料)しておく必要がある。価格はホストが自由に設定でき、予約料金に応じてAirbnbは手数料を受け取るというのが基本的な収益モデルだ。
Airbnb自体は宿泊スペースの在庫を持つ必要がないため、非常に低リスクだ(本人確認や保険など色々と担保する必要はあるが)。そして元々誰も使わない空き部屋を個人が貸し出すのだから、格安に提供され、若い旅行者を中心に世界中で大ブレークしたのである。
Airbnbは日本市場への進出においても様々な軋轢と批判を生んでいる。「防火・防犯の備えのない施設が貸し出されて危険だ」といったゲストへの心配の声や、「あまりに安いので、旅館や民宿・ペンションの経営が打撃を受ける」という既存業界側からの反発があるのは、他の国と変わらない。旅館業法に実質的に違反する人たちに小遣い稼ぎの手段を提供しているのだから、フェアに言ってもこのビジネスはグレーな性格を帯びている。
しかし日本で一番批判が強いのは、一般マンションの部屋がAirbnbで貸し出され、外国人旅行者がゲストとして利用する場合である。いわく「しょっちゅう違うガイジンたちが出入りして気味が悪い」とか、「隣の部屋でほとんど毎晩パーティをやって騒ぐのでうるさい」「曜日に関係なくゴミ出しがされて、しかも分別や置き場所がデタラメ」などといった苦情が絶えないそうだ。
1つ目の苦情には人種の違いに対する偏見が含まれているようなきらいがあるとはいえ、本来不特定多数が出入りすべきでない住居用マンションの住民からすれば不用心であることは間違いない。また、2つ目と3つ目に関しては迷惑以外の何物でもなく、とんでもない話である。今、都心近くのマンションの住民理事会では不逞のオーナーにAirbnbを利用させないよう防御策を検討するのに大わらわだと聞く。
社会インフラ・制度
2015.09.29
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/