オーナーが同居しない空き部屋シェアリングは規制強化せよ

画像: Tanner Sievert

2016.02.24

経営・マネジメント

オーナーが同居しない空き部屋シェアリングは規制強化せよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「シェアリング・エコノミー」の代表例は配車サービスのUberと、空き部屋シェアサービスのAirbnbである。いずれも日本市場に上陸済だが、かなりの注目を集めると共に、ちょっとした論議を呼んできた。Uberについては別の機会に回すとして、本稿で採り上げたいのはAirbnbのほうだ。コミュニティにとってのセキュリティの観点から考えてみよう。

そもそもなぜこんな事態になっているのか。このマンションでの苦情はどうやらアジア地域、特に日本でひどい問題になっているらしい(欧米にはそれぞれ別の特有な問題が発生している)。

Airbnb上で実際に貸し出されている日本の宿泊場所、特に東京圏の物件はアパートかマンションが大半である。一軒家の一部屋を貸すというのは稀だ。マンションの部屋を貸すのも「まるまる貸し切り」というタイプが圧倒的に多い。つまりオーナーが住んでいるわけではなく、貸し出し専用となっていると推測されるのだ。

不動産関係に詳しい知人の解説では、オーナーの多くは投資家だそうだ。都心の住居用マンションを買っている投資家には目先が利いている人たちがいて、普通だったらとっくに転売もしくは2年単位での賃貸へ転換するところを、さらに値上がりを待つ間にAirbnbにて貸出すことで日銭を稼いでいるのだそうだ(「オレもやろう」と考えたアナタ、都心のマンションは既に値段がつり上がっていてリスクは小さくないですよ!)。

台湾の友人によると(彼も中国人の友人から誘われたそうだ)、実はこの投資家たちの少なくない割合が中国人の富裕層や役人の家族であるらしい。彼らは昔からの知恵で、資産ポートフォリオとして海外不動産に投資をするのに積極的だ。それに加えて、いつ国外逃亡する必要があるかも知れず、また子息を留学させるかも知れない等、複数の理由が常にあるらしい。

日本の大都会の不動産を購入した彼らは、それをAirbnbにて貸出すことで地道に利回りを稼ぐ構造を作っているのだ。とりわけタワーマンションは眺めがよいため、特にアジアからの旅行者に人気が高いという。

普通だったらこういうビジネスは日本では、問題が大きくなった時点で規制当局から摘発されてポシャってしまう。しかしAirbnbには運も味方している。

日本経済が低空飛行を長年続けてきたため、ホテル業界は大市場の東京でさえ大規模投資を躊躇してきた。そんな中で景気が回復した上に海外からの旅行者数が予想以上に急速に伸びてきたため、東京都心では宿泊ニーズを満たすだけのホテルの供給量が絶対的に不足している。そのため国内のビジネス出張者が当日だと宿が取れずに、都心から大きく離れた立川辺りに宿泊せざるを得ないという事態が生じているのだ。

この状態で東京オリンピックを迎えたら、国内外からの旅行者からは大ブーイングを食うだろう。国内の出張も制約されてビジネス停滞の恐れさえ生じる。アベノミクスの第三の矢にとってボトルネックになりかねないのだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/         代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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