価値[1] ~価値とは何だろう?

画像: Yasushi Sakaishi

2015.11.04

ライフ・ソーシャル

価値[1] ~価値とは何だろう?

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第3章|価値〉第2話 

〈Q2〉において、同じ野球ボールでも、サイン入りは価値が高くなる。なぜなら、「有名選手がサインした」というみながあこがれる性質が加わったからである。そしてそのボールは多くの人がほしがるので、ひょっとすると高く売れて得をするかもしれない、という理由もある。

〈Q3〉でみるように、真実や正しさ、美しさは価値である。そして人はそれらを求める。これらはとくに「真・善・美」(しん・ぜん・び)と呼ばれ、価値の代表として知られている。

なぜ彼女は、旅に出るのか。それは、自分を生んだ親についてほんとうのことを知りたいからだ。いまだ自分が知らない真実には価値があり、それを求めずにはいられないのだ。また、F氏の行動がなぜ賞賛されるにふさわしいのか。それは、その行動が正しさという価値を含んでいるからである。また、なぜ人は若さを欲するのか。それは、若さが持っているエネルギーが美しさに通じていて、人はそれを価値とみるからだ。

このように、人はものごとのなかに「よい」性質を見出すとき、それを価値と感じ、価値を求めようとする。逆に、ものごとのなかに「わるい」性質を見出したとき、それは「反価値」としてきらったり、避けようとしたりする。「わるい」性質とは、好ましくない、劣っている、害を及ぼす、損になる、偽りである、悪である、醜い、などだ。

〈Q4〉をみてみよう。ガソリン車は価値のうえで両面性を持っている。つまり、移動や運搬の道具としてはおおいに便益があって価値あるものだ。ところが、排気ガスによって環境に害を与えるという面では、反価値のものである。〈Q5〉も価値と反価値の問題だ。半日のゴミ拾いボランティア活動について、幸介はしんどいという反価値と、人のためになるという価値の両方を感じている。幸介は心のなかで、価値と反価値をてんびんにかけ、いろいろと悩む。それで最終的に人によろこんでもらえるという価値のほうが大きいと思ったので、参加する決意をしたわけである。

人間はなにかものごとに接するとき、知らずのうちに価値を考えている。たとえば、「今度、保健委員を任された(その役目を引き受けることはどれほど価値のあることだろうか)」。「店でA製品とB製品、二つの物が並んでいる(どっちの価値が高くてお買い得だろう)」。「クラスで目立ちたがり屋のSがなにやら得意げに話をしている(あれは信用できないな。聞く価値のないウソの話だ)」。「一風変わった曲を歌うミュージシャンが出てきたぞ(それは買って聴くほどの価値のある曲かな)」……など。

人間は基本的に、自分に好ましいこと、利益になること、真理であること、正しいこと、美しいことに引かれて行動するようにできている。おそらくそれらのことが自分の命を守る作用があることを生命全体で知っているからだろう。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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