財政を理由とする「在宅介護」重視は、女性の社会進出を阻害する愚策。むしろ官僚的発想の真逆の施策により介護制度を再生し、地方創生につなげるべき。
その結果、介護職は常に全業種平均より高い離職率(H24で17%)で推移してきた。不況下で漸減傾向にあったが、景気回復によって他業種に転職する機会が増えたため、離職率は再び上昇に転じている。
某外食チェーンで明らかになったように、忙しい職場で櫛が抜けるように同僚が辞めていくと、残った人たちの負担が急激に高まり、それが職場崩壊につながることすらある。
こうした悪循環を押し止めるには、その社会的価値に似合った、まともな報酬を支払うことが急務だ。
ましてや介護職が相手するのは、これまで長年社会に貢献してくれたお年寄りだ。そうした人々に敬意を払いながら丁寧な介護をする気になる報酬と職場環境を提供しなければ、いずれ私たちが年老いたとき、腐った制度に復讐されることだろう。
そもそも介護業界を社会の「コストセンター」扱いにしてきたことが間違いであり、介護制度の失敗をもたらしているのだ。
公共事業の観点からは、介護業界は土木・建設業界より優れていると小生は考えている。
公共インフラ投資は乗数効果が随分低くなっているばかりか、人手の取り合いを通じて民間投資を「クラウディングアウト」している(別記事「社会インフラを考える (8) 公共事業頼りの景気維持は続かないばかりか副作用を生んでいる」を参照されたし)。
費用対効果が上がらない公共インフラ事業にこれ以上無駄金をつぎ込むよりも、介護職の人々の懐を潤したほうが乗数効果は高く(彼らは消費性向が比較的高いと推測されるため)、景気維持・向上への貢献は高いと考えられる。
そして何より、地方に継続的な仕事を生むことができ、若年層が定住するための核となる職場を生み、その土地でお金が循環する流れを作ることができる。原燃料や資材を通じて中央と海外にお金が流出する公共事業とは大いに違うのだ。
ただしその際に留意すべきは、潤わすべきはあくまで働く介護職の懐であって、彼らを雇う介護施設を運営する法人の理事たちではないことだ。そのための担保の仕組みは課題だ。
次に第二の点だが、介護士の仕事にメリハリをつけて、要介護度の高い老人の介護に集中させることだ。そして施設であろうが自宅であろうが、要介護度の低い人の介護と、介護そのものではない雑用は思い切って地域ボランティアに任せるのだ。
これは第一の点に対する「そんなに介護報酬を引き上げたら、ただでさえ高齢者が増えてくるのだから介護財政はますます悪化し、介護保険料も政府がつぎ込む税金も上がってしまう」という懸念の声に対する答になる。
社会インフラ・制度
2014.12.20
2015.01.29
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2014.10.01
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
