財政を理由とする「在宅介護」重視は、女性の社会進出を阻害する愚策。むしろ官僚的発想の真逆の施策により介護制度を再生し、地方創生につなげるべき。
つまり介護職の仕事の単価は引き上げるが、一人当たりの仕事量はこれ以上増やさない、産業トータルとしての仕事量もあまり増えないよう抑制する、ということだ。
とはいえ、高齢者が急増するのでトータルではある程度増加するのは避けられないが、その増加分は消費税の増税分と公共投資を抑制する分の税金からシフトさせればよいと考える。
今の介護職はあまりに雑多な仕事をし過ぎで、そのために休憩時間も少なく、帰宅時間も遅い。それなのに(残業代を含めても)給与は安い、と踏んだり蹴ったりだ。先ほど触れた高い離職率の有力な原因の一つは、こうした仕事環境からくる「燃え尽き」症候群だと指摘されている。
一人当たりの仕事量を減らすことで、本当にプロの仕事が必要なところに集中できる余裕が生まれる。
それを補うため、介護の現場に思い切ってロボットなどの設備を導入するよう公的資金で補助することも有効だ。決して大規模なものである必要はない。それでも介護の重労働さを和らげるのに大いに役立ち、介護士がぎっくり腰になるリスクをかなり少なくしてくれる。
こうした介護設備を導入できるのは、施設介護ならではの利点だ(当然だが、自宅介護ではとても無理)。これにより、極端な重労働という介護職のイメージ(というか現実ですが)が改善されると期待できる。
当然、ロボット導入だけでは足らない。介護職の仕事量の軽減のためには、地域ボランティアがそれ以外の仕事をカバーしてくれることが必須条件だ。
こうした体制を既に充実させているところは稀だろうが、地域にボランティア志望者は意外といるものだ。ただ、自ら声を上げることは普通の人には難しく、きっかけを待っていることも多い。
地元の市区町村が本腰を入れて、こうした「軽い介護のボランティア」を組織化することが必須で、住民連絡網や催しを通じて何度も呼び掛けることでその「きっかけ」を生みだす。うまくいけば地域再生のための絆作りにもなるだろう。
暇を持て余している定年後のオジさんたちにも、「(遠くない)将来の自分たちがお世話になるための仕組み作りだ」と説得すればよいだろう。現役企業戦士にとっても、会話の減った娘や息子を誘って地域の役に立つ機会にもなる。地元の学校と組んで、お年寄りと交流する機会が減っている小中学生の学習プログラムに組み込んでもらうことも一つの手だ。
とにかく多くの住民に、できる範囲で少しずつ参加してもらうのが長続きするコツだろう。
社会インフラ・制度
2014.12.20
2015.01.29
2015.01.26
2014.09.23
2014.10.01
2014.09.11
2014.09.04
2014.07.18
2014.06.19
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
