LCCへの注目度が高まる中、「このレベルのサービスまでしか提供できません」という内容のスカイマーク・サービスコンセプトが波紋を呼んでいます。スカイマーク・サービスコンセプトから垣間見える航空会社の苦悩から、サービスの視点で学ぶべきことは何なのでしょうか?
顧客満足の定義を理解することで分かるのは、「いかにお客様に喜んでもらうか?」という視点での努力は、少しポイントが外れているということです。
サービスサイエンスでは顧客満足は、『お客様がサービスを利用する前に抱いている「事前期待」を、利用後の「実績評価」が上回れば満足して頂ける』と定義いています。
つまり、顧客満足というのは絶対値ではなく、「事前期待」と「実績評価」の相対値であるということです。この定義からすると、「いかにお客様に喜んでもらうか?」という視点は、いかに「実績評価」を大きくするかだけに着目していて、「事前期待」という視点が抜けてしまっているということが分かります。「事前期待」を知らずして顧客満足は得られないので、先ずはお客様がどんな事前期待を抱いているのか、それを把握することが重要です。
*顧客満足の定義の詳細は、以前の記事「CS向上に効く事前期待のマネジメント」をご覧ください。
この事前期待に対しては、2つのアクションが考えられます。
1つ目は、お客様の事前期待を把握して、それに応える。
2つ目は、お客様の事前期待を把握して、事前期待をマネジメントする。
どちらも極めて重要ですが、LCCが特に苦悩しているのは、「膨らみ過ぎた事前期待を妥当なものに冷やす」という方向での「事前期待のマネジメント」だと思います。
■膨らみ過ぎた事前期待をマネジメントする。
「事前期待のマネジメント」という言葉は聞き慣れない方も多いかと思います。事前期待は膨らみやすいという厄介な特徴を持っています。そこで顧客満足を得ようと、膨らんだ事前期待に応えるためにサービスを磨き上げることももちろん大切なのですが、膨らみ続ける事前期待に応え続けることは困難です。そこで、事前期待を適正な大きさにコントロールするための「事前期待のマネジメント」が注目されているというわけです。これは、お客様の事前期待が実際のサービスレベルに比べて大きく膨らみ過ぎている場合において、有効な考え方になると思います。
具体的なアクションはサービスの内容によって様々ですが、膨らみ過ぎた事前期待を妥当なものに冷やすという方向での「前期待のマネジメント」の参考として、スカイマーク・サービスコンセプトの中身を見てみたいと思います。
*スカイマーク・サービスコンセプトは、内容には色々と問題はあったようですが、事前期待のマネジメントを試みた事例として捉えると参考になるのではないかと思います。
次のページ■「事前期待のマネジメント」の参考例として
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新