日本の製造業において「サービス」の重要性が高まってきています。その一方で「製造業のサービス化」と言われても、それがどのように事業に貢献するのかピンとこないという方も多いようです。そこで、サービスがどのように製造業の事業に貢献できるのか、その可能性を4つの方向性を考えてみたいと思います。
4.サービスだけを販売する。
最後にご紹介するのは、製造業でありながら「サービスだけを販売」することで成功しているケースです。例えば米国のGEは、航空機のエンジンを製造して航空機メーカーに販売していましたが、最近では航空会社に対して飛行時間に応じて航空機エンジンをリースすることで、リース料と保守・メンテナンス料でビジネスを成功させています。他にも、空調機器メーカーが企業に対して空調機を販売するのではなく、無料で設置した空調機を遠隔操作で制御して「快適な空調環境を提供するサービス」だけを販売しているケースもあります。
ここでのポイントは、「サービスも提供できる製造業」ではなくて、「製品製造もできるサービス業」になれるかどうかです。つまり、自社のサービスの価値を最大限発揮するために製品を作るということです。この視点に立つと、「製造ができる」ということは、他のサービス会社に比べて極めて価値のある強みを持つことができると言えます。
サービスの視点で製品の機能を見直してみると、新たな気付きが得られるのではないでしょうか?
このように、サービスを製造業のビジネスの中心に据えて収益向上や競争優位性の向上を実現することで事業に大きく貢献させることが、製造業における「サービス化」成功のポイントになると言えます。
■では、製造業のサービス化を成功させるための第一歩として何をするべきか?
それは「意識をサービス化」することだと思います。サービスの本質的な理論や定義を理解すると、例えばこれまでの製造業におけるサービス提供が、いかに「製造業的価値観」でドライブされてきたかに気付くことができます。つまり「良いサービスは喜ばれる」という価値観で勝手に作ったサービスを提供してしまっているということです。これではサービスでお客様に満足して頂くことは出来ません。「お客様の事前期待」を知らずして、サービスの提供はできないのです。
サービスの本質を理解して身に付けることで、こういったことに気付けるようになることが第一歩なのだと思います。その意味でも「サービスサイエンス」は製造業のサービス化に貢献できる価値ある理論の1つだと考えています。
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サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新