日本の製造業において「サービス」の重要性が高まってきています。その一方で「製造業のサービス化」と言われても、それがどのように事業に貢献するのかピンとこないという方も多いようです。そこで、サービスがどのように製造業の事業に貢献できるのか、その可能性を4つの方向性を考えてみたいと思います。
2.サービスで製品を差別化する。
近年、製品のライフサイクルがますます短くなっており、新製品をいち早く市場投入しても、あっという間に競合企業にキャッチアップされて、同様の製品が市場に溢れてしまうようになりました。このようなコモディティー製品においてはもはや「機能で差別化」はできなくなってしまい、過当な価格競争に巻き込まれてしまうことになります。そこで注目されているのが、「サービスでの差別化」です。
よく挙げられる例ですが、アップルのi-podが爆発的に売れたのは、製品自体の機能性にも増して、音楽をダウンロードしたりプレイリストを編集することができるi-Tunesのサービスに価値があったからではないでしょうか。これはまさに、i-Podという製品をi-Tunesというサービスで差別化した良い事例だと思います。
また、例えば産業機械メーカーの場合、装置の性能を向上させることも重要ですが、装置の故障に365日24時間いつでも即座に対応するアフターサービスを整えて、営業時間内しか対応ができない他社に対して「サービスで差別化」をするということも可能だと思います。
製造業の競争の選択肢の1つとして、サービスで勝つということを考える価値は大いにあると思います。
3.サービスを通して製品の魅力を伝える。
製品とサービスの大きな違いの一つが、購入前に試すことができるかどうかという点にあります。つまり製品は購入前に店頭で見たり触ったり他社品と比べたりということが簡単にできます。しかし、お客様のニーズがただ単に「モノが欲しい」というものから経験や価値にシフトするにつれて、店頭で製品を並べるだけでは価値を感じて頂けないということが見られるようになってきました。そこで、サービスでの経験を通して製品の価値を感じてもらうという取り組みが活発になってきています。
例えば、子供用玩具の輸入・開発・販売をしているボーネルンドでは、おもちゃを陳列販売するだけでなく、店舗内にプレイスペースが併設されていて、販売されているおもちゃや狭い室内では遊べない大きな遊具で実際にあそぶことで、製品の良さを体感できるようになっています。また、ヘルスメーターのメーカーのタニタが「タニタ食堂」で健康に良い食事を提供したり、調理器具のルクエの販売企業が「ルクエカフェ」でルクエでの調理と食事を体験してもらったり。
このように、サービスを通して製品の価値を体感してもらうことで、ファンを増やそうという取り組みが活発になってきています。
次のページ■では、製造業のサービス化を成功させるための第一歩とし...
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サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新