開国博Y150、東京五輪招致を巡る非合理な減額請求に学ぶ

2010.04.07

経営・マネジメント

開国博Y150、東京五輪招致を巡る非合理な減額請求に学ぶ

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

横浜開港150周年記念イベント開国博Y150や、16年夏季東京五輪招致を巡って、契約後の非合理な減額請求が堂々と為されています。 一体、どうしてしまったのでしょう? こうした非合理な減額請求が、ベストプラクティスとして広まることが無いよう、その問題点を明らかにすると共に、私たちがこうした状況に陥らないようにする方法についてご紹介します。

今回のケースは何れも委託先が下請法の適用対象でないため、この下請法の禁止事項に抵触しません。しかし、これは、法的に問題がないということではなく、下請事業者以外の企業であれば、不当な要求を拒否することが可能だからという理由のみにすぎません。

ですので、実際には、詳細な契約内容や、契約締結までに虚偽の情報提供がなかったかなどを見なければ分かりませんが、横浜開港150周年協会の博報堂などのJVやアサツーディ・ケイとの特定調停の申し入れ、石原都知事の電通に対する一連の要求、日本旅行の訴訟は、法廷闘争に持ち込めば持ち込むほど、認められない要求になるものと予想されます。

■ トラブル処理はリスクマネジメントよりコスト高

一般的に、トラブル処理はリスクマネジメントよりコスト高となります。そのため、最近では、トラブルをリスクと捉え、未然に防止策を講じるリスクマネジメントの考えが一般的となっています。

今回のケースでも、弁護士費用や対抗資料の準備など、本来であれば不要な費用、作業が発生しています。これらは、訴訟に勝てば回収できるという考え方もありますが、訴訟に勝てないリスクもありますし、勝てても、あくまでも損害を埋めるだけで、利益が得られる訳ではありませんので、その回収に掛かるコスト、手間、リスクを考えると、見合わないものです。

■ 取引先に借りを作ることは癒着の温床に

今回のケースは、取引先から見れば、相手につけ込む格好の機会です。横浜市、横浜開港150周年協会、東京都、東京五輪招致委員会の当事者達にしてみれば、自分達の失敗をとにかく繕いたい。また、問題がこれだけ公になってしまえば、余計に何らかの成果をこれらの騒動から得られなければ、更に責任を追及される。

こんな時に、すっと相手方から、「分かりました。今回はそちらの要求を飲みましょう。その代わり、次に予定されている○○については、よろしく頼みます。」と言われて、その誘いに乗ったふりをして、後で踏み倒すだけの覚悟のある人間がどれだけいるでしょう。まあ、こうした約束を反故にすると、後で徹底的につぶしに掛かる相手との泥沼の戦いという別の荊の道が待っていますので、大抵は、ここで絡めとられて、一生その取引先に頭が上がらないという状態を作り出してしまいます。こうした所から、取引先との癒着が始まります。

個人対個人であれば、恩義に報いるというのは大切な事です。企業間取引でも、借りをきちっと返していく事は、信頼関係を築いていく上で大切な事ですが、度を超した関係は、癒着となり、公正な取引による適正な利益を失う元となります。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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