米調査会社のアイサプライがiPadのテアダウン結果を発表しました。その結果からは、特に、大企業においては、これまでのモノづくりのパラダイム、調達・購買管理論が通用しなくなっていることが伺えます。 あなたは、この調達・購買管理論の前提がまったく変わってきていることへの備えは出来ていますか?
テアダウン(tear down)は、ティアダウン、リバースエンジニアリングとも呼ばれ、製品開発などに用いられる手法で、競合他社の製品を分解し、そこから、設計、部品やそのサプライヤの情報を入手するものです。
同社の4/7付プレスリリースによると、$499で販売されている16ギガタイプのiPadの製造原価の内訳は以下の通りです。
製造原価内訳 / メーカ / 価格(ドル) / 価格構成比
液晶ディスプレイ / LG Display(韓国)他 / 65 / 13%
ガラスパネル / Wintek(台湾) / 30 / 6%
ケーシング他 / / 32.5 / 7%
バッテリー / Amperex(香港)他 / 21 / 4%
プロセッサ / Samsung(韓国) / 19.5 / 4%
モバイルSDRAM / Samsung(韓国) / 7.3 / 1%
無線LAN / Broadcom(米国) / 11.75 / 2%
スクリーンドライバー / TI(米国) / 1.8 / 0%
オーディオチップ / Cirrus Logic(米国) / 1.2 / 0%
電源回路1 / Dialog(独) / 2.1 / 0%
電源回路2 / Samsung(韓国) / 1.25 / 0%
NADA Flash / Samsung(韓国)他 / 29.5 / 6%
その他 / / 27.7 / 6%
部品原価計 / / 250.6 / 50%
製造 / / 9 / 2%
製造原価 / / 259.6 / 52%
ここで注目されるのが、この中に日本企業の名前がないことです。液晶ディスプレイでセイコーエプソンが、フラッシュメモリで東芝がサプライヤとして含まれているのですが、それらのメインサプライヤではないようです。また、バッテリーのAmperex TechnologyはTDKの子会社ですが、これは、2005年に香港企業を買収したものです。アップルという米国企業一社の製品のことなので当てにならないかもしれませんが、この背景には、自動車と並んで日本の製造業の象徴であった電子部品で、日本企業のグローバルメーカとしての競争力に翳りが出てきていることがあるのではないでしょうか?
今でも、日本はトヨタの世界的な成功を例に、部品メーカとの固定的な関係を軸とした擦り合わせ(インテグラル)なモノづくりでの品質競争に比較優位を有する、これからもこの強みを生かしてグローバル市場で競争していくべきという論調が、昔は良かったという郷愁と相まって、根強い支持を得ています。
しかし、iPadに象徴されるように、日本が得意としてきたモノづくりの世界でも、お客様が価値を認める品質差というのが世界的に縮小しており、あらゆる製品・サービスのライフサイクルが短くなるモノづくりのファッション化が進む中で、昔の自動車のようなインテグラルでマスな市場というものは、どんどん減少していくことが予想されます。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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