野球評論家の豊田泰光氏のコラム(2010年3月11日 日本経済新聞 37面)での日本の野球界での韓国選手躍進に関する考察を、日本の調達・購買、日本企業停滞の原因と重ねて見て行きます。
氏のコラムによると、日本の高校の野球チーム数が4,100校あるのに対し、韓国はわずか53。それでも、日本の球界で活躍する韓国人プロ野球選手は後を絶たず、オリンピック、WBCでも、韓国はかなりの強敵です。
韓国には徴兵制があり、五輪などで活躍すると徴兵が免除されるかもしれない、兵隊にとられてもプロに行くほどの有望な選手は、ひじを壊すほふく前進のような訓練は手加減してくれるらしいといった思惑が、アマチュア選手のやる気をかきたてている、だから、韓国人は精神力が強い、日韓の逆転は精神力によるものだという説明に、我われはうなずいてきました。
しかし、氏は韓国野球の別の側面に着目しました。それは、ある韓国選手の変わった練習方法です。その選手は右打者ですが、ティー打撃で、最初右手だけでバットをもち、インパクト直前に左手を添える。日本では、右打者は左腕がバットをリードするので、左腕だけで振ることはあるが、右腕だけのスイングはやらない。日本のコーチは、何の効果があるのか分からず、首をかしげていたとの事です。
しかし、氏がよくみると、インパクトの「瞬間」の感覚を研ぎ澄ますには効果があるものとみえ、両手で打った時の打球が違っていた。氏は、この体験から、底辺さえ広げれば、頂点は自然と高くなるという、日本の「ピラミッド理論」は、かなりのんきで疑問符がつくと指摘しています。また、「常識」にないことを自由に取り入れる韓国の柔軟性を評価しています。そして、最後に「韓国勢は気合が違う」というが、そればかりではなく、技術、理論の側面に率直に目を向けるときと日本の野球界に対して警鐘を鳴らしていました。
野球界の実情については良く分かりませんが、この氏のコラムを読んだ時に、日本の調達・購買、日本企業の仕事の進め方、人の育て方の問題によく似ていると感じました。
日本では、縦割りの業界知識は重視しますが、横串の業務スキルやマネジメント理論にはあまり注意を払っていないように見受けられます。たとえば、業務を標準化した手順で構成される「プロセス」と捉え、業務を標準化して体系化して整理、改善、知識を蓄積していくアプローチがありますが、「調達・購買業務をプロセスとして標準化して」などと話を始めると、「調達・購買の仕事は、そんなものじゃない。ウチの購買は特殊だから」と一蹴されるのが殆どです。
新卒採用では、青田買いまでして優秀な新卒を採用するのに血眼ですが、採用した後の人材育成は、現場任せ、最悪の場合は、各個人が自ら学びなさいとほったらかし。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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