これまで原価明細を明らかにし、個々の項目の原価管理を徹底する方法は、コスト低減の手段として、広く用いられてきました。ところが、このような原価管理の徹底が、コスト削減だけではなく、売上にも有効なのです。今回は、原価管理の徹底で売上を伸ばしている前田建設工業の取組みを紹介します。
前田建設工業が、施工に関する原価をすべて発注者に開示する新たな契約形態「原価開示方式」の導入を進めているとの事です。
原価開示方式は、契約時に建設資材にとどまらず各工事の職人の日当まで、仕様・数量・単価を決め契約します。前田建設工業は、工事原価(購買価格)に対する手数料をフィーとして受取ります。更に、原価低減努力により実際工事原価が下がった時には、差額の一部を報奨金(インセンティブ)として受取ります。(出所:J-Net21 独立行政法人中小企業基盤整備機構「変わる大手企業の購買戦略」)
これまで建設業界は「どんぶり勘定」が一般的で、競争の激しい時には、一声で見積金額の数億、十数億が下がる事もあるなど、発注者にしてみれば、建設会社の見積に対して、「一体何を信じれば良いのか」という思いがありました。
一方で、一度工事を請負と、ゼネコンは、契約時に決めた代金を変えず、建設資材や職人の日当相場の上昇時には、その上昇分を自らのリスクでかぶってきました。建設工事は完成までに1年以上要するケースもあり、近年の資源価格の乱高下を見れば、そのリスク、役割は決して小さいものではなく、建設業界のどんぶり勘定が、発注者にとってもメリットであった面もあります。
前田建設工業の原価開示方式では、そうした相場の変動を吸収するだけのマージンを確保できない為に、原価の増加分については、事前に発注者とそれぞれの負担割合を協議で決めておきます。
このように原価明細を明らかにし、個々の項目の原価管理を徹底する方法は、自動車、電機、機械メーカの調達・購買の現場では、コスト低減の手段として、広く用いられてきました。一方で、営業の現場では、顧客から原価で買い叩かれ、必要な利益を確保できないとして、原価を開示するのは、あまり好まれていません。
ただ、弊社の日々の調達・購買部門の方々とのお付き合いを通じて、BtoBの取引では、それらの営業の相手先となる調達・購買担当者でも、少なからず多くの方々が、「買い叩いてでも安く買いたい」ではなく、「正しい値段で買いたい」と考えていると強く感じます。日々「正しい値段で買」っていないと、例えば、原材料高騰などを理由にサプライヤが値上げを求めてきた時に、判断をする術や社内に対して説明する術がないからです。
特に、建設、IT開発、コンサルティング、アウトソーシングといった請負業務では、形のあるモノを販売するのとは異なり、今は形のないものを、先に売らなければなりません。また、その提供に時間が掛かれば掛かる程、その間には原材料相場の変動など、様々なリスクが存在します。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます