たまたま面白い取組みがありましたので、今週も、先週に引き続き、出版業界から、経費削減の取組みをご紹介します。講談社や小学館など大手出版社が、女性誌のサイズを統一するとの事です。今回は、こうした取組みのメリットや、その背景、障害、成功の秘訣などについて見ていきましょう。
現在、女性誌のサイズは、編集部のこだわりなどから寸法が1~2ミリずつ異なっています。講談社や小学館など大手出版社が、これを止め、女性誌のサイズを、集英社の縦297ミリ、横232ミリにサイズを統一します。
サイズ統一の対象は、講談社が「ViVi」など5誌、光文社が「JJ」など7誌、小学館が「CamCam」など9誌、主婦の友社がRayなど9誌。大手出版社が雑誌の寸法を共通化するのは初めてになります。(出所:日本経済新聞 2010年2月15日 9面)
各誌のサイズ統一は、コスト削減に非常に大きなメリットをもたらします。まず、紙の仕様が統一される事により、より多くのサプライヤがそれに対応した製品を生産、在庫を持つようになり、特注品に比べ、紙の調達において、より多くの競争がもたらされます。
また、印刷における段取替えの調整時間が減り、製作コストの削減にもつながります。輸送、在庫管理でも、サイズが規格化される事により、関連機器、什器の開発などにより、作業を標準化、効率化できる機会が増えます。
これらのメリットは、サプライヤにとっても同じで、紙の仕様が共通化される事により、サプライヤの方でも調達・購買・製造・物流コストなどの引き下げを図られます。
また、お客様にとっても、今回の用紙サイズの統一により、雑誌掲載の広告寸法も各社共通になり、広告主が雑誌ごとに広告の原稿を作り直す手間が省けるというメリットもあるようです。
これまで、雑誌は、各社共、創刊の度に紙を特注し、サイズや厚み、紙質を微妙に変える事により、読者に個性を訴えてきました。もしからしたら、用紙サプライヤや印刷会社の営業マンに、「他社と同じ紙では差別化できません!少しでもサイズを変えれば、手に取った時に違いが分かってもらえます!」とそそのかされていたのかもしれません。これらのサプライヤにしてみれば、対応サイズを細かく変える事により、顧客の棲み分けができるので、多少用紙の提供コストが高くなっても、こちらの道を選ぶでしょう。
しかし、本当にそうでしょうか?
確かに、印刷の出来上がり、手触り、厚みは、使う紙によってお客様の反応、ブランドイメージに影響があるでしょう。しかし、触っただけで30cmや20cmの幅の中で1-2ミリの違いが分かる人が何人いるでしょう。各社の編集部は、「きゃー、CanCamのこのサイズ、カワイイーっ!!」という反応を、本当に期待していたのでしょうか。それであれば、判サイズを変えるなど大胆にやらないと、お客様に気づいてもらえません。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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