パナソニックが、ホテルなどの法人向け事業でグループの幅広い商品を一括納入し、保守まで請け負う「まるごと事業」に乗り出しました。 今回は、意図的か結果的にかは分かりませんが、このパナソニックのまるごと事業に秘められた巧妙な罠について明らかにしていきます。
パナソニックが、ホテル向けに家電から住設機器まで一括納入する事業に乗り出します。パナソニックは、法人向け事業でグループの幅広い商品を一括納入し、保守まで請け負う「まるごと事業」を新たな収益源とする方針です。
この度、まるごと事業のホテル向けでの第1弾として、阪急阪神ホテルズのホテル阪急インターナショナルの客室一室に、家電や照明・音量調節システムを導入したとの事です。(出所:日本経済新聞 2010年3月12日 11面)
今回のパナソニックが納入した製品は、パナソニック製の3Dテレビなど家電20品目以上、パナソニック電工の照明・音量調節システムなど多岐に亘ります。
パナソニックは、昨年末、太陽電池や業務用冷蔵庫を得意とする三洋電機を子会社化し、白物家電、AV機器のパナソニック、住設機器、照明技術のパナソニック電工と合わせ、グループでは空間設備に対する幅広い品揃えを確保できるようになりました。
この強みを活かそうというのが、「まるごと事業」なのでしょう。同社の2010年の経営方針では、「家・ビル まるごとソリューション」となっていましたが、ホテル、ショッピングセンター、店舗などの商業空間にも、まるごとのターゲットは広がっているようです。
パナソニックでは、産業用ロボットも手掛けていることから、このまるごとのターゲットは、病院や介護施設などの医療福祉分野、工場などの製造分野にもゆくゆくは広がっていくことでしょう。
また、こうした取組みが広がれば、設備メーカのもう一つの強みである、製品納入後の修理などの保守を競争なく取り込む事を活かして、かなり高い収益があげられるでしょう。
売り手企業として、パナソニックの戦略は間違っていません。いや、この戦略は非常に正しいものと絶賛されるべきものでしょう。
お客様にしてみても、複数のグループ会社の異なる事業部門毎の営業マンにバラバラおしかけられるよりも、一人の営業マンに話をすればすべて持ってきてくれるという事になれば、話は簡単になります。加えて、パナソニックも営業コストが削減できる事から、それが製品・サービス価格に反映され、直接的なコストメリットも享受できるかもしれません。
しかし、このパナソニックの戦略には、意図的か結果的にかは分かりませんが、巧妙な罠が仕掛けられています。
その罠とは、我われ買い手企業の調達・購買機能の一部を肩代わりするという便利さを提供することで、少しずつ我われの調達・購買能力を失わせ、パナソニックに頼らざるを得ないという状況を作り出すというものです。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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