内紛の噂まで飛び出してきたトヨタ自動車の今回の大規模リコール騒動ですが、トヨタは、この難局を無事乗り切ることができると見られます。 何を根拠にこんなことを言っているかというと、それは、リコール問題が拡大していく中での対象部品のサプライヤに対するトヨタの対応です。 今回は、トヨタのそうした対応についてご紹介します。
自動車部品を巡るリコールで記憶に新しいのは、2000年に行なわれたフォードによるエクスプローラーに標準で装着されていたブリジストンファイアストンのタイヤ1440万本のリコールです。この時、
「問題は車ではなく、タイヤだ」
当時フォードのCEOであったナッサー氏は、この問題の非を一方的にブリジストンファイアストンに一貫して押し付けました。当初、フォードと共同でこの問題の解決を図ろうとしていたブリジストンファイアストンも、フォードの一方的な対応に業を煮やし、2001年5月にフォードへのタイヤ供給打ち切りを宣言します。業績低迷やタイヤ事故問題によるイメージ悪化に伴い、2001年10月にナッサーCEOは辞任に追い込まれ、その後の裁判でフォードエクスプローラーの設計上の欠陥が指摘されるなどした後、2005年10月にファイアストンとフォードは、ファイアストンが約275億円の和解金ををフォードに支払うことで、ようやく和解します。
この間、5年間もの月日が費やされましたが、リコールの原因となった事故の原因はタイヤにあるのか、車両設計にあるのか特定されず、その間、それまで100年続いていた両社の取引は停止されたままでした。
トヨタは、このケースに学んだのか、アクセルペダルが戻りにくくなる不具合、プリウスのブレーキの不具合の何れにおいても、トヨタはこれまでの所、サプライアに非を押し付けるのではなく、自社の設計の問題と発表しています。それのみならず、アクセルペダルの部品サプライヤであるCTS社について、その技術力、品質を擁護する発言やCTSとの取引を継続することを明言するなど、非を押し付けるどころか、関係に配慮した発言を続けています。
そうした姿勢が評価されてか、トヨタのリコール問題が取り沙汰された後、1月に行なわれた米国の調達・購買担当者を対象とした調査では、トヨタのこのリコール問題により、取引先からのトヨタの評価は変わらないが57%、取引先からの評価が上がるが14%、取引先からの評価が下がるが29%となり、取引先からの評価はあまり下がっていないことが伺えます。(出所:Purchasing March 2010)
調査では、29%が取引先からの評価が下がると回答していますが、これは、トヨタの対応に問題があったというよりも、消費者の製品メーカに対する品質評価が下がることを懸念してのことと推察されます。それよりも、着目すべきは、リコール問題の発生という評価が上がるべき要素のない中で、14%の回答者が取引先からの評価が上がると回答していることです。それだけ、トヨタの今回のCTS社についての対応が公正であったと言えます。
次のページ問題解決は、そもそも、問題は何かを正確に認識することか...
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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