横浜開港150周年記念イベント開国博Y150や、16年夏季東京五輪招致を巡って、契約後の非合理な減額請求が堂々と為されています。 一体、どうしてしまったのでしょう? こうした非合理な減額請求が、ベストプラクティスとして広まることが無いよう、その問題点を明らかにすると共に、私たちがこうした状況に陥らないようにする方法についてご紹介します。
横浜開港150周年記念イベント、開国博Y150を主催した財団法人横浜開港150周年協会は、企画や運営を委託した博報堂など8社で構成されるJV(共同企業体)とアサツーディ・ケイ(ADK)に、未払い分契約金額約34億円の一部減額を求める特定調停を、横浜地裁に申し立てました。(出所:2010年3月30日 YOMIURI ONLINE)
開国博Y150を巡っては、日本旅行が、反対に、横浜開港150周年協会を相手取り、同協会と結んだ入場券の大口買取契約の代金の一部返金を求め、横浜地裁に民事訴訟を起こしています。(出所:2010年3月11日 MSN産経ニュース)
何れも、実際の有料入場者数が、目標の500万人を大きく下回る約124万人、目標の4分の1にとどまった事が、これらの争議の要因となっています。
類似の事例としては、東京都の石原慎太郎知事が、招致失敗後、16年夏季五輪招致の最終プレゼンテーションで放映した映像の制作費が5億円がだったことについて、「都民も私も納得できない」と述べ、映像を制作した電通に値下げを求める意向を明らかにし(出所:2009年12月11日 毎日jp)、その後、 石原都知事が会長を務める東京五輪招致委員会が電通に対する未払いの約6億円の債権放棄を要求した(出所:2010年1月31日 asahi.com)のが、記憶に新しいところです。
地方自治体の契約を巡っては、非合理な減額請求がベストプラクティスとして、認知されつつあるのでしょうか?
これらは、政治的パフォーマンスとして、公共の利益、市民の税金を守るために戦う行政、悪質な大企業に立ち向かう行政という構図を作り出す目的があるのかもしれません。或いは、イベントや五輪招致の失敗というそもそもの自分の失政を隠すために、注目を別に集める目的で打ち上げられた花火なのかもしれません。はたまた、裁判や借入交渉を自身に有利に運ぶための「あらゆる手を尽くしました」とのアピールなのかもしれません。
ただ、こうした姿勢は、民間であろうが行政であろうが、決して、調達・購買のベストプラクティスと呼べるものではありません。こうした不当な減額請求が、ベストプラクティスとして広まることが無いよう、その問題点を明らかにすると共に、私たちがこうした状況に陥らないようにする方法についてご紹介します。
■ 不当な減額請求は下請法では禁止事項
下請法では、その第4条第1項第3号で、発注時に決定した代金を、「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにも関わらず発注後に減額することを明確に禁じています。売上の見込み違い、発注側の事業の失敗などは、当然、下請事業者の責に帰すべき理由として認められません。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます