「日本企業は技術力がある、品質・サービスがよい」「国産は外国産より安全」「外部より社員の方が信頼できる」、最近よく聞くフレーズですが、それらを担保するデータも示されず、観念論的なものが多いのが気になります。 今回は、この神話を揺るがすようなケースを基に、「日本は技術、品質、安全、サービスに優る」「国産>外国産」「社員>外部」神話について考えます。
このミクロの視点に立った時、よいものを安く買うには逆張りの発想が重要です。コストは理論で決まりますが、価格はサプライヤの意志や相場で決まります。価格が相場で決まるならば、逆張りでなければ、よいものを安く買えません。順張りでは、よくて高値づかみ、悪ければ、バブルに引っかかってしまいます。しかし、調達・購買では、産業や企業ではなく、どの物、誰と付き合うかというミクロな視点の方が重要になるのであれば、幾らでもよいものを安く調達する機会はあります。
「有名な大企業よりも無名な中小、ベンチャー企業」「一言えば十理解する日本企業ではなく、十言っても一しか持ってこない外国企業」「即戦力の中途採用よりやる気のある新卒採用」でも、目の前にいるサプライヤ、担当者が信頼できるのであれば、彼/彼女らと付き合った方が、3割どころか、1桁あるいは2桁のコスト低減が可能です。
また、民主党政権になって、雇用の硬直化がますます懸念される現在は、経営者にとっては、正社員を増やすにはあまりにもリスクが多く、サプライヤの力を上手く使って、現社員の生産性を飛躍的に拡大する以外に現実的な選択はありません。
残念ながら、雇用政策については、政党に関わらず、政治家・官僚とも、厳しいグローバル競争の現実を理解している人は皆無に等しいと言わざるを得ません。それにしても、現在の雇用政策は、小手先の対策が問題をより悪化させる典型的な事例のような気がしてなりません。
このような現実の中では、「国産>外国産」「社員>外部」といったこれまで当たり前とされていた常識、神話を疑う事が突破口になるものと考えます。
日本では、なかなか理解してもらえないのですが、モノ、ヒト、カネ、情報あらゆる経営資源は、外部からの調達が可能です。例えば、生産委託はモノだけでなく、ノウハウという情報、研究開発や生産に携わるヒトの調達手段の一つです。カネも銀行だけでなく、社債、株式発行など色々な調達手段があります。経営すら、正しいか否かに関わらず、その企業の根幹となるはずのビジョンや経営戦略などを、コンサルティング会社などの外部に委託している企業が数多くあるのが現実です。
このように、現在は、外部から調達できない経営資源は皆無です。ですので、問題は、いかに外部から経営資源を上手く調達するかの前に、何を自社で確保し、何を外部から確保するかがあり、その答えは、個々の会社が目指すものによって異なります。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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