ベンチャーなど成長企業の株式について引き続き考えてみたい。
株式の価値を決めるのは基本的にはキャッシュフロー(現金収支)である。
それが将来、企業にもたらされる純利益なのか、配当として投資家に支払われる利益なのか、あるいは、資産を売却することによって得られる現金収入なのか、多少議論の余地はあるが、株価は将来のキャッシュフローによって決まると考えることができる。
全ての株式価値の合計である企業の株主価値(時価総額)や負債も含めた企業価値はキャッシュフローを基にして考えることができる。
企業価値 = 株主資本価値 + 負債
企業価値(あるいは株主資本価値)を見積もるためには事業計画が必要である。そこで問われるのは外的競争環境と内部環境、ならびに、それらの動向・見通し・計画である。
外的競争環境には、競合他社、供給業者、顧客、技術革新などが含まれる。また、内部環境とは、外的競争環境の要素と区別することは困難であるが、組織内部における経営資源とその配分の状況や見通である。
企業価値を評価するためには、保有する資産を維持するのか売却するのかどうかという判断なども含めて、外的競争環境分析と内部分析に基づいた事業計画が不可欠である。
事業計画がなければ企業価値は評価できない。もちろん、そこから逆算できる株価も決まらない。しかし、事業計画を立てるにしても2年、長くても5年程度が限界であろう。それ以上は、経営者・経営陣のビジョンの領域になり、長期的な目標ということになるだろう。そこまで考えると、なんとなくという直観の方が精度が高いかも知れない。
外的競争環境と内部環境は変化する。確固としたビジョンやミッションを持った経営者が、優れた経営能力やリーダーシップによって組織や環境に対して強く働きかけたとしても、2年後、3年後の状況を予測することや計画することは困難だろう。
米の売上や立地の良い商用ビルの収入など、比較的安定したキャッシュフローは比較的予想しやすいだろうが、将来を計画することや予想することは困難な作業である。事業計画は、計算でもあるが、小説を書くようなアートの世界にある。
事業計画では、様々な分析や判断を考慮して作られる実現可能性が最も高いシナリオや最適な予想値が利用される。それらは、利用可能な全ての情報を基に描かれる最良の進路となるだろう。しかし、事業計画は最善・最良のものでありながら、現実的には、正しくない。
それは、トヨタグループの創始者が自動機織り機の開発に取り組んでいた際に、自分の活動が世界的な自動車メーカーに発展することを予想していなかったこと、ソフトバンクがゲームソフトなどの卸売業を始めた際に、ブロードバンド・インターネット・サービスを開始して、携帯電話事業にも参入することが計画されていなかったことと同じである。何か大きな可能性、夢、理想を描いていたとしても、それが現在の形と一致するとは考えられない。
将来は予測不能である。このため、ベンチャーなど成長企業の事業計画では、実際の2倍、3倍、あるいは、10倍、100倍の収益予想を立てることが、結果的に正しいこともある。
【V.スピリット No.69より】
V.スピリット総集編4
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