ベンチャーなど成長企業の株式について引き続き考えてみたい。
人身の売買は認められていない。人身の売買は人権や倫理道徳に反する行為である。
しかし、法的な人格を持つ企業(株式会社)の所有権は、公けに売買されている。企業という人格が株式数に応じて分割されて、公的または私的な市場において売買される。これは、社会運営上のルールとして認められているものである。しかし、「人間」の所有権の売買との類似性から直感的な胡散臭さ、複雑さ、分かり難さは否めない。
これらの点において、株式の売買は一般に敬遠されられがちである。株式の性質、その所有者の権利、その背景にある企業の経営状況に対する不透明さなどによって、株式の売買は倫理観や道徳心によって直感的な反発を受けやすい。
株式は、それが株券として発行されているかどうかを問わず、発行企業の所有権を表す契約であり、契約証書である。株式を保有した瞬間にある人の人体の一部あるいは臓器の一部の所有権を得るのに近い。「そんなものを持ちたくない」という感情や感覚と株式の保有に関する感情や感覚は多くの場合、同質であろう。
人体や臓器にしても株式にしても、そこには生命力が宿っている。切り離されたパーツであっても、その部分は生き続けようとする。そんなパーツを持っていたら、その生命力を支援したいと思うのが人情である。株式の所有者は、株式を短期間で売却することができることもあるが、少なくても株式を保有している期間は、株式発行会社の支援者となる。上下変動を繰り返す株式市場においては、一時的な値上りを期待するにしろ、株価の上昇を期待する行為は、株式発行会社の経営を支援する行為につながる。
個人経営の企業も多いが、株式会社など契約によって所有権や受益権が明らかな組織が企業活動の基本になる。所有権は株式として経営者、あるいは、企業関係者などに分割して保有される。株式の発行や管理のための費用が重荷にならない範囲において、株主は多い方が良い。企業の支援者となる株主数は多いにこしたことはない。株主のネットワークは、優れた顧客基盤となり、また、人材・資金・情報・ノウハウなど経営に不可欠な資源を供給する源泉となる。
企業には社会責任も問われる。企業は株式会社として株式を発行して、できるだけ多くの人々に株式を保有してもらうことが望ましいだろう。また、株主がより多くの経済的・社会的な恩恵を受けられるように努めなければならない。株主の経済的・社会的な恩恵は、多くの場合、株価の値上り、あるいは、配当や株主優待という形で実現する。 (次回に続く)
【V.スピリット No.68より】
V.スピリット総集編4
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