ベンチャーの株はオプション 【1】

2008.07.08

経営・マネジメント

ベンチャーの株はオプション 【1】

猪熊 篤史

ベンチャーなど成長企業の株式について考えてみたい。

私が株式に興味を持った理由はいくつかある。最も直接的な理由は大学卒業を前にして就職活動を始めた際に、バブル崩壊と証券不祥事で株式市場が注目されていたからである。英米文学科に所属していたので英語の勉強は心がけていたが、サークル活動やアルバイトにおいてテニスが生活の中心にあった。平凡な学生生活の中で証券不祥事とともに報告される日々の株価は私の関心をひいた。「そんなに悪いものなら、なぜ毎日株式市場の動向を報告するのか?」という素朴な疑問が原点にあった。

私には、人が嫌うものや避けるものに着目する傾向と、人が好むものに素直に巻かれる傾向がある。人が避けるもので私が注目するものの多くは、長い間、日の目を見ないことがある。人が好んで私も巻かれる一種の流行は短命であることも多い。

「株式投資は賭け事であり、賭け事は悪いことである」と教えられて育った。バブル経済崩壊後、インターネットによる株式の取引が普及し始めるころまでは、それは日本の家庭において特殊なことではなかったように思う。

証券会社に約6年勤め、業界に約10年間在籍して株式について知識として、また、感覚として勉強させて頂いた。しかし、株式がどんな意味を持つものかを学んだのは自分がほぼ全額出資して設立した会社に投資家を募るようになってからである。日々の事業活動を通して株式とは何か、どんな意味や価値があるのかを考えている。

教科書的に言うと、株式には、自益権と共益権がある。自益権とは、経済的な利益配分を受ける権利であり、会社があげる利益に対して配当を受け取るための配当請求権や会社が解散した際に残った資産の分配を受けるための残余財産請求権などである。共益権とは、会社の経営に参加する権利であり、株主総会における議決権などがある。

しかし、そんなことを知っているのは一部の学生や研究者と一握りの経営者だけであろう。証券会社の社員であれば、株式については研修などで勉強して知っているだろうが、社会人であっても株式の意味を知らなくても特別不都合はないようである。

投資家が、どのような立場にあるかによっても株式の意味は異なる。純粋な投資家にとっては、受け取る配当の額や将来の配当の可能性をも反映する株価の動向が重要になるだろう。オーナー経営者としては自分の発言力や収入を最大化できるような経営者としての議決権、あるいは、より良い経営を行う経営者を任命する権利などが重要になるだろう。株式の権利や価値を総合的に享受しようとするのは一部の積極的な経営者と最近活躍が注目されている投資ファンドくらいではないだろうか? (次回に続く)

【V.スピリット No.65より】

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