チャンスをつかむ人、つかまない人 【1】

2008.06.19

ライフ・ソーシャル

チャンスをつかむ人、つかまない人 【1】

猪熊 篤史

チャンスをつかむ人とつかまない人、あるいは、チャンスをつかめる人とつかめない人について考えてみたい。

世界はチャンス(機会)に満ちている。我々はチャンスに囲まれて生活している。

「どこにチャンスがあるんだ!」、「良いことなんか少しもないじゃないか!」という人は、いくつかの深刻な問題を抱えていることになるだろう。問題を抱えていることに気付かないのは、不幸である。

人は、チャンスに気付かない。チャンスをチャンスだと理解しない。多数のチャンスの連続によったチャンスをチャンスとして記憶にとどめることが出来ない。これらの問題をいくつか同時に抱えていることも多いだろう。

チャンスに気付かないというのは、例えば、足元に1万円が落ちているのに気付かないということである。特定のクライアントに今、販売しているサービスを提案すれば取引が成立するのにそれに気付かない、あるいは、取引先が在庫処分をしていて、通常の半額で商品を仕入れられるのにそれに気付かないということである。

チャンスをチャンスだと理解しないというのは、発想の問題である。少子化や高齢化などが良い例となるであろう。検討し尽くされているようでもあるが、少子化によって学習塾の生徒数が減るのは一見ピンチのようでもあるが、家庭における1人当りの子供に対する投資は増加というチャンスである。高齢化によって高齢者を支える費用負担が増大することから財政的にはピンチであるが、新たな消費人口が増えるチャンスだと考えられる。高齢化は、知識面、あるいは、軽作業などにおいて新たな労働力を供給することにもなる。少子化や高齢化は理想的なチャンスではないが、一種のチャンスであることに変りはない。

チャンスをチャンスとして記憶にとどめられないというのは、実は朝起きてから夜寝るまで、チャンスが次々に訪れていて、例えば、正確に数えると1日で1000個のチャンスに出会っているのに、最後に訪れたチャンスしか、チャンスとして記憶していないということである。あるいは、一つの失敗の印象が強すぎで、全てのチャンスを忘れてしまっているということである。

チャンスをチャンスとしてとらえるためには知識や経験も必要である。

「チャンスの素」とでも呼べるような材料を組み立ててチャンスを形作る知識が必要である。チャンスとそれ以外の要素も含まれる混沌とした状況から、チャンスの素を紡ぎだすために知識は必要である。ここで言う知識とは本で読んで学べるようなものである。

一方で、人は過去の経験との類似性によってものごとを判断する。過去の成功経験や失敗経験との比較によって、チャンスをチャンスとして捉える。これは感覚的なもの、能力的なものなので本で学べるものではない。

チャンスに気付き、チャンスをチャンスとして理解し、チャンスをチャンスとして記憶にとどめ、チャンスをチャンスだととらえたとしても、実際にチャンスを活かすためにはいくつかの要素が必要であろう。

それらは、「気力」、「行動力」、「戦略」である。 (次回に続く)

【V.スピリット No.45より】

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